ナレッジとは?意味と情報・ノウハウとの違い、ナレッジマネジメントの進め方をわかりやすく解説

ナレッジとは何か、データ・情報・ノウハウとの違いとビジネスでの使い方を解説します。ナレッジマネジメントの意味とメリット、知識が回る5つの働き、失敗しやすい理由、進め方の5つの手順、使うツールとAIで変わる所まで紹介します。
目次
1.ナレッジとは|仕事に使える形になった知識
1-1.データ・情報・ナレッジの違い
1-2.ナレッジとノウハウの違い
1-3.ビジネスでの「ナレッジ」の使い方
2.ナレッジマネジメントとは
2-1.形式知と暗黙知
2-2.よく紹介される4つの型
3.ナレッジマネジメントのメリット
4.ナレッジマネジメントは5つの働きで回る
5.ナレッジマネジメントが失敗しやすい理由
6.ナレッジマネジメントの進め方 5つの手順
6-1.1. 目的を1つの業務の判断に絞る
6-2.2. 今ある知識を棚卸しする
6-3.3. 置き場と探し方を決める
6-4.4. 足りない知識を質問から見つける
6-5.5. 使われ方を見て直す
7.ナレッジマネジメントに使うツール
8.AIでナレッジマネジメントはどう変わるか
9.まとめ|ナレッジマネジメントは「直す」から次の「集める」へつなぐ
「ナレッジを共有しよう」「ナレッジマネジメントに取り組もう」と社内で言われても、ナレッジが情報やノウハウとどう違うのか、何から手を付ければよいのかは、意外とはっきりしないものです。社内wikiやファイルサーバーを用意したのに、書き込みが続かず、結局は詳しい人に聞きに行く毎日に戻ってしまった、という声もよく聞かれます。
この記事では、ナレッジという言葉の意味を、データ・情報・ノウハウとの違いから整理したうえで、ナレッジマネジメントの考え方とメリット、失敗しやすい理由、進め方の手順、使うツールまでを順に解説します。
ナレッジマネジメントは、知識をためる取り組みではなく、仕事の判断に知識を届け、使われ方を見て直し続ける取り組みです。当社はそう考えており、後半では、社員の質問のうち答えられなかったものを手がかりに、足りない知識を見つける進め方も紹介します。
ナレッジとは|仕事に使える形になった知識
ナレッジ(knowledge)は、英語で「知識」を意味する言葉です。ビジネスでナレッジと言うときは、単なる知識一般ではなく、社員が仕事の中で身につけた知識や経験のうち、ほかの人も仕事に使えるものを指すことが多く、手順や規程のような文書になっている知識から、ベテランの判断のコツのように本人の頭の中にしかない知識までを含みます。
データ・情報・ナレッジの違い
ナレッジを理解するには、データと情報との違いを押さえると分かりやすくなります。データは数字や記録そのもの、情報はデータに意味や文脈を付けて整理したもの、ナレッジは情報をもとに「どう判断し、どう動くか」まで分かる形になったものです。

区分 | 中身 | 例(受注の仕事) |
データ | 数字や記録そのもの | 今月の受注件数は120件 |
情報 | 意味や文脈を付けて整理したもの | 先月より2割減り、減ったのは既存の取引先から |
ナレッジ | どう判断し、どう動くかまで分かるもの | 既存の取引先の注文が減ったときは、担当の交代や相手先の決算期を先に確かめる |
※表の数字は説明のための例です。
データや情報は、システムに入れておけば誰でも同じものを見られます。一方でナレッジは、同じ情報を見ても「何を疑い、次に何をするか」が人によって違うところに表れるため、ためておくだけでは伝わりにくいという特徴があります。
ナレッジとノウハウの違い
ナレッジとよく並べて使われるのが、ノウハウです。ノウハウ(know-how)は「やり方を知っていること」で、作業のコツや手順のように、物事をうまく進める方法を指します。ナレッジはそれより広く、やり方に加えて、事実・判断の決め手・誰に聞けば分かるか、といった知識全体を含む言葉として使われるのが一般的です。
実務では、ノウハウはナレッジの一部と考えておけば困ることはありません。大事なのは言葉の区別より、自社で残したいのが手順なのか、判断の決め手なのかを分けて考えることで、後者ほど文書にしにくく、残すのに工夫が要ります。
ビジネスでの「ナレッジ」の使い方
社内では「ナレッジを共有する」「ナレッジをためる」「ナレッジが属人化している」のように使われます。たとえば「営業のナレッジ」と言えば、提案の型や断られやすい場面の切り返し、取引先ごとの事情など、営業の仕事に使える知識をまとめて指しています。
特定の業界や業務に詳しい知識は、「ドメインナレッジ」と呼ばれることもあります。システム開発の現場で、業務の中身を知っていることを指して使われることが多い言葉です。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、社員一人ひとりが持つナレッジを、組織として集め、整理し、必要な人に届けて使い、古くなったら直していく取り組みのことです。個人の経験を会社の財産にして、仕事の質と速さを上げることを目的とします。
日本では、野中郁次郎・竹内弘高の『知識創造企業』(東洋経済新報社・1996年)で示された考え方が広く知られており、ナレッジマネジメントの土台としてよく紹介されています。
形式知と暗黙知
ナレッジマネジメントを考えるうえで欠かせないのが、形式知と暗黙知の区別です。形式知は言葉や数字で表せて文書として渡せる知識、暗黙知は経験や勘にもとづく言葉にしにくい知識で、両者が行き来しながら組織の知識が増えていく流れを表したのが SECIモデルです。
暗黙知と形式知の違い、SECIモデルの4つの段階、暗黙知を言葉にする聞き方は「暗黙知とは?形式知との違いとSECIモデルを分かりやすく解説|言葉にする聞き方まで」で詳しく解説しています。
よく紹介される4つの型
ナレッジマネジメントは、何の知識を扱うかによって、次の4つの型に分けて紹介されることがよくあります。自社がどれを目指すのかを先に決めておくと、集める知識と使うツールが選びやすくなります。
型 | 扱う知識 | 例 |
ベストプラクティス共有型 | うまくいったやり方 | 成績のよい営業の提案の進め方を全員で使う |
専門知識ネットワーク型 | 誰が何に詳しいか | 困ったときに聞くべき人を探せるようにする |
顧客知識共有型 | 顧客とのやり取りの記録 | 問い合わせと回答の記録をFAQにする |
知的資本集約型 | 会社に残る知識資産 | 設計の資料や過去の不具合の記録をまとめて使う |
中堅・中小企業で最初に取り組みやすいのは、ベストプラクティス共有型と顧客知識共有型です。社内でよく聞かれる質問や、問い合わせへの答えは、すでに記録の形で残っていることが多く、出発点にしやすいからです。
ナレッジマネジメントのメリット
ナレッジマネジメントに取り組むと、次のような効果が期待できます。
- 探す時間と聞く時間が減る:資料の置き場所や、詳しい人を探す手間が減る
- 判断のばらつきが減る:同じ場面で、誰が担当しても近い判断ができるようになる
- 属人化が和らぐ:特定の人が休んだり辞めたりしても、仕事が止まりにくくなる
- 新人が早く立ち上がる:先輩に聞かなくても、まず自分で調べられる
- 同じ失敗を繰り返しにくくなる:過去の不具合やクレームの記録が次の判断に使われる
特に属人化への効き目は、人手が限られる会社ほど大きくなります。属人化を解消する手順は「属人化を解消する手順と事例|答えられなかった質問から見つけ、AIで聞き取って残す」でも解説しています。
ナレッジマネジメントは5つの働きで回る
ナレッジマネジメントは、知識を「ためる」ことだと受け取られがちですが、実際には5つの働きがそろって初めて回ります。どれか1つが抜けると、そこで流れが止まります。

働き | 何をするか | 抜けたときに起きること |
集める | 社員の知識を文書や記録にする | そもそも中身が無い |
整理する | 置き場所と分け方を決める | あっても見つからない |
届ける | 必要な人が必要なときに探せるようにする | 知っている人に聞きに行く毎日に戻る |
使う | 仕事の判断に実際に使う | 読まれない資料が増える |
直す | 古い所や足りない所を見つけて直す | 中身が古くなり、信用されなくなる |
上位の解説記事の多くは「ためる・共有する・活用する」の3段で説明していますが、当社は最後の「直す」と、そこから次の「集める」へ戻る流れが一番抜けやすいと考えています。何の知識が足りないのかが見えないまま、思いついた人に書いてもらうだけでは、集める対象が決まらないからです。
ナレッジマネジメントが失敗しやすい理由
ナレッジマネジメントがうまくいかない理由には、書く手間に見合う見返りが無い、何を書けばよいか分からない、探しても見つからない、古くなっても誰も気づかない、何が足りないのかが見えない、といったものがあります。ツールを入れただけで止まってしまうのは、5つの働きのうち「集める」と「整理する」だけを用意し、「使う」と「直す」が仕組みになっていないことが多いためです。
それぞれの理由と対策は「ナレッジ共有が難しいのはなぜ?5つの理由と、AIで集めて使う仕組み」で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
ナレッジマネジメントの進め方 5つの手順
ナレッジマネジメントは、全社で大きく始めるより、1つの業務で小さく回してみるほうが続きます。当社は次の5つの手順で進めることをおすすめしています。

1. 目的を1つの業務の判断に絞る
最初に「どの業務の、どんな判断を速く正しくしたいか」を1つ決めます。「社内の知識を全部残す」のような広い目的では、何から集めるかが決まりません。問い合わせ対応の回答を担当者でそろえたい、設備のトラブル対応で新人が一次対応できるようにしたい、といった具体的な目的にすると、集める範囲がはっきりします。
2. 今ある知識を棚卸しする
規程・マニュアル・過去の報告書・問い合わせの記録など、すでに文書になっている知識を洗い出します。新しく書いてもらう前に、今ある資料で答えられる範囲を確かめておくと、書く人の負担を減らせます。古い版と新しい版が混ざっている所は、この段階でどちらが正しいかを決めておきます。
3. 置き場と探し方を決める
資料の置き場所を1か所に寄せ、探し方を決めます。社内wikiや社内ポータルを入口にする方法もあれば、社内の資料をまとめてAIに読ませ、質問すると答えが返ってくる形にする方法もあります。大事なのは、使う人が置き場所を知らなくても知識にたどり着けることです。
4. 足りない知識を質問から見つける
社員が実際に聞いた質問のうち、今の資料で答えられなかったものを集めます。答えられなかった質問は、資料が無いのか、古いのか、探し方の問題なのかを調べる手がかりの一覧になります。何を書けばよいか分からないという悩みは、「この質問に答えられる知識を残してほしい」という具体的な頼みごとに変わり、知っている人には、白紙に書いてもらう代わりに質問に答えてもらう形で聞き取れます。
聞き取りの進め方は「業務引継書テンプレート|AIに聞き取らせて作る、後任が困らない書き方」や「技術継承ができない理由と、ベテランが辞める前にAIで聞き取る方法」で紹介しています。
5. 使われ方を見て直す
最後に、知識が実際に使われているかを見ます。何がよく聞かれているか、どの資料が答えの根拠に使われているか、答えられなかった質問は減っているかを、月に1回ほど見直すと、直すべき所と次に集めるべき知識が見えてきます。ここで見つかった足りない所が、次の手順4の材料になります。
たとえば、こういう場面を考えてみます。問い合わせ対応を目的にした会社で、月の見直しのときに「返品の送料はどちらが持つか」という質問が何度も答えられずに残っていたとします。規程を確かめると、取引先によって扱いが違うのに、その一覧がどこにも無かったと分かり、担当者に聞き取って一覧を足したことで、次の月からはその質問に答えが返るようになった、という流れです(説明のための想定の例です)。
ナレッジマネジメントに使うツール
ナレッジマネジメントに使うツールは、5つの働きのどこを助けるかで選ぶと迷いにくくなります。
ツール | 主に助ける働き | 向いていること | 気をつけること |
社内wiki | 集める・整理する | 手順や決まりを、社員が書いて直す | 書く人が決まっていないと止まる |
FAQ | 届ける | よく聞かれる質問への答えをそろえる | 載っていない質問には答えられない |
社内ポータル | 届ける | 社内の情報とシステムの入口を1つにする | 入口の先で答えまでは返さない |
社内検索 | 届ける | 散らばった資料を横断して探す | 探す言葉を知らないと見つからない |
社内資料で答えるAI | 届ける・使う・直す | 質問に、根拠の資料を示して答える | 資料が古いと答えも古くなる |
社内wikiの作り方は「社内Wikiを無料で作る方法4ステップで解説|おすすめツールと失敗理由も紹介」、社内ポータルは「社内ポータルとは?情報を一元化しても「探せない」が残る理由と作り方|SharePointが使いにくいときの見直し方」で解説しています。
AIでナレッジマネジメントはどう変わるか
生成AIが仕事で使われるようになり、ナレッジマネジメントの「届ける」と「使う」は大きく変わりつつあります。社内の資料をAIに読ませておけば、社員は置き場所や探す言葉を知らなくても、普段の言葉で質問するだけで答えにたどり着けるからです。社内の資料で答えるAIの作り方は「社内AIの構築方法|社内資料で答えるAIの作り方と、使われなくなる理由」で解説しています。
ただし、AIに資料を読ませれば終わりではありません。資料に無いことはAIにも答えられず、古い資料を読ませれば古い答えが返ります。当社は、AIが変えるのは「届ける」だけでなく、答えられなかった質問が記録に残ることで、何が足りないかが見えるようになる「直す」の部分だと考えています。
当社の「相棒AI」は、社内の資料から引用をつけて答え、資料に無い内容を引用として出さないように作っています。答えられなかった質問は懸案として残り、管理する人は、何が聞かれ、何に答えられなかったかを見ることができます。そして当社が開発中の「Knowledge Hub」は、その懸案をもとに、知っている人にAIが質問して答えをまとめ、承認を経て社内の文書にする仕組みです。使う側と集める側をつなぐことで、5つの働きが1周するようにしています。
社内の情報をAIに入れるときは、情報の扱いにも注意が要ります。気をつける所は「ChatGPT・生成AIの情報漏洩はなぜ起きる?5つの経路とプラン別の扱い、会社でできる対策」で解説しています。
まとめ|ナレッジマネジメントは「直す」から次の「集める」へつなぐ
- ナレッジは、仕事の判断や行動に使える形になった知識で、データや情報より一歩進んだもの
- ナレッジマネジメントは、集める・整理する・届ける・使う・直すの5つの働きで回る
- 失敗しやすいのは、ツールを入れて「ためる」だけで止まり、「使う」と「直す」が仕組みになっていないとき
- 始めるときは1つの業務の判断に絞り、答えられなかった質問から足りない知識を見つける
- AIは探す手間を減らすだけでなく、何が足りないかを見えるようにする
ナレッジマネジメントは、立派な仕組みを作ることより、使われて直される流れを1つの業務で作ることから始まります。社員の質問から足りない知識を見つけて残していく仕組みに関心があれば、相棒AIの詳細をご覧いただくか、お気軽にご相談ください。
よくある質問
- ナレッジとは簡単に言うと何ですか?
- 仕事の中で身につけた知識や経験のうち、ほかの人も仕事に使える形になったものです。手順や規程のような文書になった知識から、ベテランの判断のコツのように本人の頭の中にしかない知識までを含みます。
- ナレッジと情報の違いは何ですか?
- 情報はデータに意味や文脈を付けて整理したもの、ナレッジは情報をもとに「どう判断し、どう動くか」まで分かる形になったものです。同じ情報を見ても、何を疑い次に何をするかが人によって違うところにナレッジが表れます。
- ナレッジとノウハウの違いは何ですか?
- ノウハウは作業のコツや手順など、物事をうまく進めるやり方のことです。ナレッジはそれより広く、事実や判断の決め手、誰に聞けば分かるかといった知識全体を指します。実務ではノウハウはナレッジの一部と考えて差し支えありません。
- ナレッジマネジメントは何から始めればよいですか?
- 全社で大きく始めるより、1つの業務の判断に目的を絞って始めるのがおすすめです。今ある資料を棚卸しし、置き場と探し方を決めたうえで、社員の質問のうち答えられなかったものから足りない知識を見つけて残していきます。
- ナレッジマネジメントにAIを使うと何が変わりますか?
- 社内の資料をAIに読ませると、社員は置き場所や探す言葉を知らなくても、質問するだけで答えにたどり着けます。さらに答えられなかった質問が記録に残るので、何の知識が足りないかが見え、資料を直すきっかけになります。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






