確認不足によるミスを仕組みで防ぐ方法|作業ミス・受注ミスが「注意します」で減らない理由

確認不足によるミスは、個人の注意力ではなく仕組みで防ぎます。確認不足が起きる3つの場面、ダブルチェックが効かなくなる理由、なくす・止める・その場で引ける・記録して使うの4段の対策を、作業ミスと受注ミスの例で解説します。
目次
1.確認不足とは|「確認したつもり」が起きる理由
1-1.確認不足が起きる3つの場面
2.「注意します」「ダブルチェック」で減らない理由
2-1.ダブルチェックが効かなくなるとき
3.確認不足を仕組みで防ぐ4つの段
3-1.1. 確認そのものをなくす
3-2.2. 間違えたら先へ進めない
3-3.3. 照らす基準を、その場で引ける所に置く
3-4.4. 起きたミスと答えを記録し、次に使う
4.作業ミスの防止|製造の現場に当てはめる
5.受注ミスの防止|卸売・小売の受注に当てはめる
6.当社が自分の仕事で「止める作り」にしていること
7.AIは「照らす基準をその場で引く」役になれる
8.まとめ|確認不足は、注意力ではなく作りで減らす
確認不足によるミスが起きたとき、「次から気をつけます」「確認を徹底します」と書いて終わっていないでしょうか。本人は本当に気をつけるつもりでも、忙しい日や慣れた作業のときに同じ種類のミスがまた起き、そのたびに注意を呼びかける紙が一枚ずつ増えていく、という職場はめずらしくありません。
確認不足は、本人のやる気や性格の問題として扱われやすい一方で、実際には「何と照らせば正しいと言えるのか」が決まっていない、決まっていてもその場で見られない、という職場の側の事情から起きていることが多くあります。
確認不足によるミスは、確認そのものをなくす、間違えたら先へ進めない、照らす基準をその場で引ける所に置く、起きたことを記録して次に使う、の4段の順で仕組みにすると減らせます。この記事では、確認不足が起きる場面、ダブルチェックが効かなくなる理由、4段の対策を、製造の作業ミスと卸売・小売の受注ミスの例に当てはめて説明します。
確認不足とは|「確認したつもり」が起きる理由
確認不足は、決められた確認をしなかった、または確認はしたが見るべき所を見ていなかったために、誤りに気づかないまま次の工程へ渡してしまうことです。ヒューマンエラーの原因として挙げられることが多く、事務の数字の打ち間違いから、現場の部品の取り違えまで、仕事の種類を問わず起きます。
やっかいなのは、本人の中では「確認した」ことになっている場合が多い点です。画面を見て、指でなぞり、うなずいたとしても、照らした相手がそもそも古い資料だったり、思い込みの数字だったりすれば、確認は形だけになります。
確認不足が起きる3つの場面
確認不足が起きる場面は、大きく3つに分けられます。

場面 | 起きていること | よくある例 |
照らす基準が無い | 何と比べれば正しいかが決まっていない | 「いつもの数」で済ませ、注文書と照らしていない |
基準がその場で見られない | 正しい答えが手順書の奥や、ベテランの頭の中にある | 型番の読み替えを、詳しい人に聞かないと分からない |
確認が工程に組み込まれていない | 確認するかどうかが、その人の判断に任されている | 急ぎの日だけ確認が飛ぶ |
1つ目と2つ目は、確認する人がいくら注意深くても防ぎきれません。照らす相手が無いか、見に行くのに手間がかかる状態では、人は記憶や思い込みで埋めてしまうからです。3つ目は、確認を人の気持ちに預けているので、忙しさや疲れでいちばん先に削られます。
「注意します」「ダブルチェック」で減らない理由
確認不足のあとによく出てくる対策は、注意の呼びかけとダブルチェックです。どちらも無意味ではありませんが、上の3つの場面のどれにも手を入れていないため、しばらくすると効き目が薄れていきます。
注意の呼びかけは、ミスを起こした人の気持ちに働きかけるものです。人の注意力は、忙しさ、慣れ、疲れで上下するので、注意だけに頼った対策は、同じ条件がそろったときにまた破られやすくなります。何がどう変わったのかが書かれないので、上司やほかの部署は、対策が守られているかを確かめることもできません。
ダブルチェックが効かなくなるとき
ダブルチェックは、二人目が同じものを見ることで見落としを拾う方法です。ただ、二人目が「一人目が見たはずだ」と考えたり、一人目が「あとで二人目が見るから」と考えたりすると、二人とも確認が浅くなります。二人が同じ古い資料や同じ思い込みを基準にしていれば、二人で同じ誤りを通してしまいます。
ダブルチェックを続けるなら、二人目が何と照らすのかを決め、一人目とは別の資料や別の方法で確かめる形にしておくと、形だけになりにくくなります。それでも人が見る確認である以上、限界はあるので、次の節の順番で、人が確認しなくてよい所から減らしていくことが先になります。
確認不足を仕組みで防ぐ4つの段
確認不足への対策は、上位の解説記事でも十数個が並ぶことが多く、どれから手を付ければよいかが分かりにくくなりがちです。当社は、効き目の強い順に4つの段に分けて考えています。上の段で防げるものは上で防ぎ、残ったものを下の段で受け止めます。

1. 確認そのものをなくす
いちばん強いのは、人が確認しなくても誤りが入らない作りにすることです。数字を手で打ち直す工程があるなら、元のデータをそのまま取り込めないかを考えます。自由に書ける欄を、選択肢から選ぶ形に変えるだけでも、書き間違いと読み違いは起きにくくなります。
確認の手順を足すより、確認が要る工程そのものを減らす方が、人の注意力に頼る量を確実に減らせます。
2. 間違えたら先へ進めない
確認をなくせない所では、誤りがあると次へ進めない作りにします。製造の現場でいうフールプルーフ(ポカヨケ)の考え方で、向きが違うと部品がはまらない治具や、必須の欄が空のままだと登録できない画面がこれにあたります。
この段の良いところは、守られたかどうかを人が見張らなくてよいことです。止まった回数を数えれば、どこで誤りが起きやすいかも分かります。
3. 照らす基準を、その場で引ける所に置く
人が判断する確認は最後まで残ります。そのとき必要なのは、何と照らせば正しいかという基準が、作業している場所ですぐ見られることです。手順書がフォルダの奥にある、例外の扱いがベテランの頭の中にしかない、という状態では、確認する人は記憶で埋めるしかありません。
基準を文書にするときは、手順だけでなく、どこを見て、何がおかしければ止めるのかという判断の目安まで書いておくと、経験の浅い人でも同じ所で手を止められます。言葉になっていない判断を文書にする方法は「暗黙知とは?形式知との違いとSECIモデルを分かりやすく解説」で詳しく扱っています。
4. 起きたミスと答えを記録し、次に使う
それでも起きたミスは、起きた事実と、何と照らせば防げたかを記録し、次に同じ場面に出会う人が引ける所に残します。記録が書庫で眠ると、同じミスは担当が替わるたびに繰り返されます。
ミスのあとに出す報告書の項目や、「注意します」を具体的な策に書き換える例文は「再発防止策の書き方と例文」にまとめました。この記事では、報告書を書く前の段階、つまりミスを起こしにくくする作りの側を扱っています。
作業ミスの防止|製造の現場に当てはめる
ここからは、4つの段を現場に当てはめます。以下は説明のための想定の例で、実在の会社の出来事ではありません。
たとえば、こういう場面を考えてみます。ある工場の組立工程で、似た型番の部品を取り違えるミスが年に何度か起きていました。対策はそのたびに「部品の型番をよく見ること」という掲示を増やすことで、掲示は作業台のまわりに数枚貼られていました。
4つの段で見直すと、手を入れる所は次のように変わります。
段 | 見直しの例 |
1. なくす | 似た型番の部品を、同じ棚の隣どうしに置かない。使う部品だけを工程ごとにまとめて出す |
2. 止める | 部品のバーコードを読み、指示と違えば次の作業に進めない |
3. その場で引ける | 型番の読み替えや例外の扱いを、作業台から引ける所に置く |
4. 記録して使う | 取り違えた部品の組み合わせを記録し、棚の配置と教育に返す |
掲示を増やす対策は1つの段にも当たらず、作業する人の注意力に頼る量を増やしているだけだと分かります。新人を現場で教えるときも、注意点を口で伝えるだけでなく、どの段で防いでいるのかを示すと、なぜその手順なのかが伝わりやすくなります。
受注ミスの防止|卸売・小売の受注に当てはめる
受注ミスは、数量の打ち間違い、品番の取り違え、納期や届け先の書き漏れなどの形で起き、出荷や請求までずれが広がるので、気づいたときには取引先に迷惑がかかっていることが多いミスです。ここでも、説明のための想定の例で考えます。
たとえば、FAXと電話とメールで注文を受け、担当者が社内の受注システムに打ち込んでいる卸の会社を考えます。忙しい月末に、ケースとバラの単位を取り違える、取引先ごとの決まった届け先を書き漏らす、といったミスが続いていました。

受け取る、入力する、照らす、出荷する、の4つの工程に分けると、それぞれで手を入れる所が見えてきます。受け取る所では、注文の受け口を減らし、決まった書式で受けるほど、読み違いが減ります。入力する所では、取引先を選ぶと届け先と単位の初期値が入るようにし、いつもと桁が違う数量は確認を求めて止めます。照らす所では、取引先ごとの決まりごと(単位・締め・届け先の例外)を、入力の画面から引ける所に置きます。出荷する所では、ずれが見つかった注文を記録し、どの取引先のどの決まりで間違えやすいかを、次の入力の注意として返します。
このうち、取引先ごとの決まりごとは、ベテランの担当者が覚えていて文書に無い、ということが起きやすい所です。担当者の異動や退職で、受注ミスが急に増えるのはこのためです。決まりごとを人から聞き取って残す方法は「業務引継書テンプレート」で紹介しています。
当社が自分の仕事で「止める作り」にしていること
当社は、自社の業務の多くをAIに任せており、その作業の決まりを手順書にして運用しています。そこでも、確認不足への向き合い方は同じでした。
最初は、間違いが起きるたびに手順書へ「〇〇しないこと」と注意書きを足していましたが、注意書きが増えるほど、読み落としも起きやすくなりました。そこで今は、守らせたい決まりのうち機械で判定できるものを、書く前や作業の区切りに機械が検査して止める作りに移しています。たとえば、決まりを書いたファイルに書き込む前に、別のファイルからの書き写しや使ってはいけない書き方が無いかを検査して止める、作業の報告が決めた行数を超えたら一度止める、といった形です。
あわせて、「全部確かめた」「漏れは無い」という自己申告は、作業した者とは別の確認役に確かめさせています。作業した本人が自分の確認を確かめても、同じ思い込みを通してしまうからで、これは前の節のダブルチェックの考え方を、別の基準で見る形にしたものです。
この経験から当社が考えているのは、人でもAIでも、注意力に頼る量を減らすほど確認不足は減る、ということです。
AIは「照らす基準をその場で引く」役になれる
4つの段のうち、3段目の「照らす基準をその場で引ける所に置く」は、文書を作っても探すのに手間がかかれば使われない、という壁に当たりやすい段です。手順書、取引先ごとの決まり、過去のトラブルの記録が、別々のフォルダやシステムに分かれていると、確認する人は探すのをあきらめて記憶に頼ります。
ここで、社内の資料をもとに答えるAIが役に立ちます。当社の「相棒AI」は、社内の資料をもとに質問に答え、答えの根拠にした資料を引用として示します。確認する人は「この取引先の単位は?」「この部品の代わりに使えるものは?」と聞き、引用元の資料で答えを確かめられます。
資料に書かれていないことを聞かれたときは、答えられなかった質問として残るので、どの知識が文書になっていないかも見えてきます。答えられなかった質問から足りない知識を見つける考え方は「ナレッジ共有が難しいのはなぜ?」で、社内資料で答えるAIの作り方は「社内AIの構築方法」で詳しく説明しています。
ただし、AIは1段目と2段目の代わりにはなりません。確認をなくせる所はなくし、止められる所は止めたうえで、それでも人が判断する所の支えとして使うのが合っています。
あわせて読みたい:4M変更とは?変更管理の進め方、安全衛生教育とは?
まとめ|確認不足は、注意力ではなく作りで減らす
確認不足によるミスは、本人の注意力だけの問題ではなく、照らす基準が無い、その場で見られない、確認が工程に組み込まれていない、という職場の作りから起きています。
- 確認不足は「照らす基準が無い」「その場で見られない」「工程に組み込まれていない」の3つの場面で起きる
- 注意の呼びかけと、同じ基準で見るダブルチェックは、時間がたつと効き目が薄れる
- 対策は、なくす → 止める → その場で引ける → 記録して使う、の順で考える
- 作業ミスも受注ミスも、掲示を増やす前に、どの段で防げるかを見る
- AIは、照らす基準をその場で引く役として使い、なくす・止めるの代わりにはしない
まずは、直近で起きた確認不足のミスを1件取り上げ、4つの段のどこで防げたかを書き出してみてください。注意書きを1枚増やすより先に、手を入れる所が見つかるはずです。
よくある質問
- 確認不足とは何ですか?
- 決められた確認をしなかった、または確認はしたが見るべき所を見ていなかったために、誤りに気づかないまま次の工程へ渡してしまうことです。本人は確認したつもりでも、照らした相手が古い資料や思い込みだと、確認は形だけになります。
- 確認不足はなぜ「注意します」で減らないのですか?
- 人の注意力は忙しさや慣れ、疲れで上下するため、注意だけに頼った対策は同じ条件がそろうとまた破られやすくなります。照らす基準が無い、その場で見られない、確認が工程に組み込まれていない、という職場の作りに手を入れることが必要です。
- ダブルチェックをしてもミスが減らないのはなぜですか?
- 二人目が「一人目が見たはず」と考えたり、二人が同じ古い資料や思い込みを基準にしたりすると、二人で同じ誤りを通してしまいます。続けるなら、二人目は一人目とは別の資料や方法で確かめる形にします。
- 作業ミスや受注ミスを防ぐには、何から手を付ければよいですか?
- 確認そのものをなくす、間違えたら先へ進めない、照らす基準をその場で引ける所に置く、起きたことを記録して次に使う、の順で考えます。直近のミスを1件取り上げ、どの段で防げたかを書き出すところから始めると、手を入れる所が見つかります。
- 確認不足の対策にAIは使えますか?
- 社内の資料をもとに答えるAIは、照らす基準をその場で引く役として使えます。答えの根拠になった資料を確かめられ、答えられなかった質問から文書に無い知識も見つけられます。ただし、確認をなくす・誤りで止める仕組みの代わりにはならないので、それらと組み合わせて使います。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






