OJT研修とは?進め方の4段階と、教える余裕がない現場で回す方法

OJT研修の意味とOff-JTとの違い、見せる・説明する・やらせる・確かめるの4段階の進め方を解説します。厚生労働省の調査で「指導する人材が不足」「人材育成を行う時間がない」が上位に挙がる中、教える余裕がない現場でOJTを回すための分担の考え方も紹介します。
目次
1.OJT研修とは|仕事をしながら教える育成の方法
2.OJTとOff-JTの違い
3.OJTの進め方|見せる・説明する・やらせる・確かめる
3-1.4段階のうち、時間がかかるのは「説明する」と「確かめる」
3-2.育成の計画は、ゴールから逆算して作る
4.OJTがうまくいかない3つの理由
5.教える余裕がない現場でOJTを回す方法|教える中身を3つに分ける
5-1.人が教えるのは「判断の手がかり」
5-2.資料に任せるのは「何度も説明していること」
5-3.AIに任せるのは「資料に書いてあることへの質問」
5-4.新人の日報を、OJTの「確かめる」に使う
6.OJTを始める前に決めておく5つのこと
7.まとめ|先輩の時間は、人でなければ伝わらない所に使う
新人が入ってきたので、OJTで育ててほしいと頼まれたものの、自分の仕事で手一杯で、何をどの順番で教えればよいか考える余裕もない、という声は多くの職場で聞かれます。教える側が忙しいと、新人は質問のタイミングをつかめずに手が止まり、教える側も同じ説明を何度も繰り返すことになって、どちらも疲れてしまいます。
厚生労働省の「令和7年度 能力開発基本調査」でも、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとする事業所は80.1%にのぼり、問題点の上位には「指導する人材が不足している」(59.5%)と「人材育成を行う時間がない」(45.5%)が並んでいます。教える余裕がないのは、一部の職場だけの悩みではありません。
OJTは「先輩が付きっきりで教えるもの」と考えるほど回らなくなります。教える中身のうち、人でなければ伝わらない所に先輩の時間を使い、それ以外は資料とAIに任せる分担を先に決めるのが近道です。この記事では、OJT研修の意味とOff-JTとの違い、基本の4段階の進め方、余裕がない現場でOJTを回すための分担の考え方を順に説明します。
OJT研修とは|仕事をしながら教える育成の方法
OJTは On-the-Job Training の略で、職場で実際の仕事をしながら、上司や先輩が仕事のやり方を教える育成の方法です。新人が早く現場で動けるようになることを目的に、多くの会社で新入社員の育成の柱になっています。
「OJT研修」という言葉は、2つの意味で使われています。1つは、新人に対して職場で行うOJTそのもので、もう1つは、OJTを担当する先輩(OJTトレーナー)が教え方を学ぶための研修です。この記事では前者を中心に、教える側が押さえておきたい進め方を扱います。
同じ調査では、正社員または正社員以外に計画的なOJTを実施した事業所は64.1%で、正社員の対象別では「新入社員」が52.3%と最も高くなっています。裏を返せば、計画を立てずに、その場その場で教えている職場もまだ多いということです。
OJTとOff-JTの違い
OJTとよく比べられるのが Off-JT(Off-the-Job Training)で、職場を離れて行う集合研修や外部の講座、eラーニングなどを指します。どちらが優れているというより、伝えやすい中身が違うので、組み合わせて使うものです。

OJT | Off-JT | |
場所 | 職場で、実際の仕事の中で | 職場を離れた研修・講座 |
教える人 | 上司・先輩 | 講師・外部の専門家 |
向いている中身 | その職場のやり方・判断 | 業界共通の知識・基本の考え方 |
よい所 | すぐ仕事に使える | 体系立てて学べる |
弱い所 | 教える人で差が出る | 現場とずれることがある |
OJTの弱い所として必ず挙がるのが、教える人によって中身と質に差が出ることです。同じ仕事でも、先輩Aは手順を丁寧に教え、先輩Bは「見て覚えて」で済ませる、ということが起きやすく、その差がそのまま新人の育ち方の差になります。
OJTの進め方|見せる・説明する・やらせる・確かめる
OJTの進め方としてよく使われるのが、見せる(Show)・説明する(Tell)・やらせる(Do)・確かめる(Check)の4つの段階です。順番に回すことで、新人が「見ただけ」「聞いただけ」で終わらず、自分でできるところまで進めます。

段階 | 教える側がすること | 新人の状態 |
1. 見せる | 実際にやってみせる | 仕事の全体の流れが分かる |
2. 説明する | 手順と、なぜそうするかを伝える | やり方と理由が分かる |
3. やらせる | 新人にやってもらい、横で見守る | 自分の手でできる |
4. 確かめる | できた所と直す所を伝え、次を決める | 一人で任せられるか分かる |
4段階のうち、時間がかかるのは「説明する」と「確かめる」
4つの段階のうち、教える側の時間を多く取るのは、説明すると確かめるの2つです。説明は新人ごとに何度も繰り返すことになり、確かめるは新人の作業が終わるのを待って見る必要があるため、忙しい時期ほど後回しにされがちです。
そして、説明の多くは「前にも別の新人に話した内容」です。この繰り返しの部分を資料に移せれば、先輩の時間を、見せることと確かめることに回せるようになります。この考え方は、後半の「分担」の節で詳しく書きます。
育成の計画は、ゴールから逆算して作る
その場で教える内容を決めていると、新人は今週何ができればよいのかが分からず、教える側も教えた漏れに気づけません。最初に「3か月後に一人で任せたい仕事」を決め、そこから月ごと・週ごとにできるようになることを並べておくと、4段階をどこまで回せばよいかが見えます。
計画は細かく作り込む必要はなく、仕事の名前と、一人でできるようになったかの印を並べた表で十分です。大事なのは、教える側と新人が同じ表を見て、今どこにいるかを話せることです。
OJTがうまくいかない3つの理由
OJTがうまく回らないとき、原因は先輩の教え方の上手下手よりも、仕組みの側にあることが少なくありません。よくあるのは次の3つです。
1つ目は、教える側に時間がないことです。OJTの担当になっても自分の仕事の量は変わらないことが多く、新人の質問に答えるたびに自分の仕事が止まるので、つい「後で」と言ってしまいます。調査で「人材育成を行う時間がない」が45.5%に上るのは、この状態が珍しくないことを示しています。
2つ目は、教える中身が先輩の頭の中にしか無いことです。手順書はあっても古かったり、例外のときの判断が書かれていなかったりすると、新人は結局先輩に聞くしかなく、聞かれる側の負担が減りません。
3つ目は、新人が質問しにくいことです。忙しそうな先輩に同じことを2回聞くのは気が引けるので、分からないまま進めて間違え、手直しの手間がかえって増える、ということが起きます。「新人の質問が多い」と感じる職場ほど、実は聞けずに止まっている質問も多いと考えたほうがよいでしょう。
教える余裕がない現場でOJTを回す方法|教える中身を3つに分ける
教える余裕がないとき、先輩にもっと時間を割いてもらうのは長続きしません。そこで、教える中身を「人が教えるもの」「資料に任せるもの」「AIに任せるもの」の3つに分け、先輩の時間を人でなければ伝わらない所に集めるのが現実に回る形です。

分担 | 中身の例 | 先輩の時間 |
人が教える | 判断の手がかり・例外のときの決め手・仕事の勘所 | ここに集める |
資料に任せる | 手順・決まり・よく使う書式 | 作るときと直すときだけ |
AIに任せる | 資料に書いてあることへの、何度も来る質問 | 答えられなかった質問を見るときだけ |
人が教えるのは「判断の手がかり」
手順は資料に書けますが、「この数字が出たら、まず現場を疑う」「この言い方をする顧客は本気だ」といった判断の手がかりは、本人も意識していないことが多く、資料には残りにくいものです。言葉にしにくい知識(暗黙知)の扱い方は「暗黙知とは?形式知との違いとSECIモデルを分かりやすく解説」で詳しく書いています。
先輩の時間は、4段階のうち「見せる」と「確かめる」の場面で、この手がかりを伝えることに使うのが一番効きます。新人の作業を確かめるときに「どこを見て、そう判断したのか」を一緒に話すと、手順書には書けない部分が少しずつ伝わっていきます。
資料に任せるのは「何度も説明していること」
資料にする中身は、新人が来るたびに繰り返している説明から選ぶと、作った分だけ先輩の手間が減ります。白紙から書き出すのは負担が大きいので、新人に説明しているところを録音して文字にする、あるいはAIに聞き取りをさせて形にする、といった方法で作ると楽です。
当社では、ベテランの知識をAIに聞き取らせる試しをしています。架空の設備保全のベテラン(AIが演じた)に言葉になっていない知識を9つ持たせて比べたところ、6つの問いの表を本人が埋める方法では9つのうち出たのは1つでしたが、AIが聞き取ると7つが出ました(ベテラン役もAIで、1回ずつの試しです)。聞き取りの問いと使えるプロンプトは「業務引継書テンプレート|AIに聞き取らせて作る、後任が困らない書き方」と「技術継承ができない理由と、ベテランが辞める前にAIで聞き取る方法」で紹介しています。
AIに任せるのは「資料に書いてあることへの質問」
資料ができても、新人がそれを読みこなして必要な所を見つけられるとは限りません。「あの書式はどこにあるか」「この場合は誰に回すのか」といった、資料に答えがある質問を社内の資料で答えるAIに受けてもらうと、新人は先輩の手を止めずに確かめられ、先輩は同じ説明を繰り返さずに済みます。
たとえば、こういう場面を考えてみます(想定の例です)。入社2週目の新人が、見積の書式と承認の回し方を先輩に3日続けて聞き、先輩はそのたびに作業を止めていました。社内の手順書を読み込ませたAIにまず聞く決まりにすると、書式と回し方はAIが手順書の該当箇所つきで答え、先輩に来るのは「この顧客は値引きの相談にどこまで乗ってよいか」のような判断の質問だけになります。
ここで大事なのは、AIが資料に無いことをもっともらしく答えないことです。当社の「相棒AI」は、社内の資料から引用をつけて答え、資料に無い内容を引用として出さないように作っています。答えられなかった質問は一覧に残るので、どの説明が資料に足りないかが見え、それが次に「人が教える」か「資料に足す」かを決める材料になります。
社内の資料で答えるAIの作り方は「社内チャットボットを自作する前に」で、自作するときにつまずく所とあわせて書いています。
新人の日報を、OJTの「確かめる」に使う
確かめる段階の時間を減らすには、新人の日報を使う方法もあります。その日にやったこと、迷ったこと、聞けなかったことを短く書いてもらえば、先輩は横で見ていなくても、どこで止まっているかを後から読んで確かめられます。読み返せる日報の書き方は「業務日報の書き方」で紹介しています。
OJTを始める前に決めておく5つのこと
OJTを担当することになったら、教え始める前に次の5つを決めておくと、途中で迷うことが減ります。
- ゴール:3か月後に一人で任せたい仕事は何か
- 計画:月ごと・週ごとに、できるようになることの表
- 分担:人が教えるもの・資料に任せるもの・AIに任せるもの
- 質問の窓口:まずどこで調べ、何を先輩に聞くか
- 振り返り:週に1回、表を見ながら新人と話す時間
特に「質問の窓口」を決めておくと、新人は迷わずに調べ、先輩は判断の質問だけを受けられるようになります。先輩一人に任せきりにせず、上司が計画と分担を一緒に決めることも、OJTを形だけにしないために欠かせません。
まとめ|先輩の時間は、人でなければ伝わらない所に使う
OJTは、仕事をしながら教える育成の方法で、見せる・説明する・やらせる・確かめるの4段階で進めます。ただ、厚生労働省の調査でも「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間がない」が上位に挙がるように、先輩が付きっきりで教える形は、多くの職場で続きません。
- OJTとOff-JTは、伝えやすい中身が違うので組み合わせて使う
- 4段階のうち時間がかかるのは「説明する」と「確かめる」
- 教える中身を、人が教える・資料に任せる・AIに任せるの3つに分ける
- 先輩の時間は、判断の手がかりを伝えることに集める
- 答えられなかった質問から、資料に足りない説明を見つける
デイワンの相棒AIは、社内の資料から引用つきで答え、答えられなかった質問を残すことで、新人の質問を受けながら資料の足りない所を見えるようにします。新人の育成やベテランの知識の引き継ぎでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
あわせて読みたい:新人教育の進め方、後進の育成とは?育たない本当の理由
よくある質問
- OJT研修とは何ですか。
- 職場で実際の仕事をしながら、上司や先輩が仕事のやり方を教える育成の方法(OJT)のことです。OJTを担当する先輩が教え方を学ぶ研修を指して使われることもあります。
- OJTとOff-JTの違いは何ですか。
- OJTは職場で仕事の中で教える方法、Off-JTは職場を離れた研修や講座で学ぶ方法です。OJTはその職場のやり方や判断、Off-JTは業界共通の知識や基本の考え方を伝えるのに向いていて、組み合わせて使います。
- OJTはどんな手順で進めればよいですか。
- 見せる・説明する・やらせる・確かめるの4つの段階で進めるのが基本です。最初に3か月後に一人で任せたい仕事を決め、そこから逆算した計画の表を新人と共有しておくと進めやすくなります。
- 教える側に時間がないとき、OJTはどうすればよいですか。
- 教える中身を、人が教えるもの・資料に任せるもの・AIに任せるものの3つに分けます。何度も繰り返す説明は資料と社内の資料で答えるAIに任せ、先輩の時間は判断の手がかりを伝えることに集めます。
- 新人の質問が多くて仕事が止まります。どうすればよいですか。
- 質問の窓口を決め、まず資料や社内の資料で答えるAIで調べ、判断が要る質問だけを先輩に聞く流れにします。答えられなかった質問を集めると、資料に足りない説明が分かります。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






