4M変更とは?変更管理の進め方と、記録を次の変更に活かす残し方

4M変更(人・機械・材料・方法)の意味と5M1Eとの違い、ISO 9001の変更管理の考え方、4M変更管理の5つのステップ、台帳に書く項目と記入例を解説。変更の記録を、次に同じ変更をする人が引ける社内の知識として残す方法までまとめました。
目次
1.4M変更とは|人・機械・材料・方法の変更を管理すること
1-1.4つのMの中身と変更の例
1-2.5M1E・6Mとの違い
1-3.変更管理と変化点管理の違い
2.4M変更を管理する目的とISO 9001の要求
3.4M変更管理の進め方(5つのステップ)
3-1.1. 変更点を洗い出す
3-2.2. 影響を見積もる
3-3.3. 対策を決めて承認を得る
3-4.4. 実施して初期管理をする
3-5.5. 記録して残す
4.どこまでを4M変更として扱うか
5.4M変更の記録に書く項目
6.記録を次の変更に活かす残し方
6-1.なぜ変更の記録は読まれないのか
6-2.「次の人が聞ける形」に書き足す3つのこと
6-3.社内の資料から答えるAIに読ませる
7.まとめ
製造の現場では、作業者の交代、設備の修理、材料の仕入先の切り替え、手順の見直しといった変更が毎日のように起きています。どれも必要な変更ですが、その変更をきっかけに、寸法がわずかにずれる、外観の不良が増える、といった品質のトラブルが起きることがあります。
取引先から「4M変更の申請を出してください」と言われて初めて帳票を調べた方や、変更管理の台帳はあるものの、書くことが目的になっていて誰も読み返していない、と感じている品質保証の担当者の方も少なくないのではないでしょうか。
4M変更管理は、人・機械・材料・方法の変更を事前に洗い出し、影響を見積もってから実施し、結果を記録する仕組みです。そして、その記録を次に同じ変更をする人が探して読める所に残すと、台帳は手続きの書類ではなく、工場の知識になります。この記事では、4M変更の基本と5M1Eとの違い、管理の進め方、台帳の項目、記録の残し方を順に説明します。
4M変更とは|人・機械・材料・方法の変更を管理すること
4M変更は、製品の品質を左右する4つの要素、Man(人)・Machine(機械)・Material(材料)・Method(方法)のいずれかを変えることを指します。製造業で広く使われる品質管理の考え方で、変更点を洗い出して把握し、変更による不具合を前もって防ぐことを目的にしています。「4M変化点」と呼ぶ会社もあります。

4つのMの中身と変更の例
4つのMそれぞれに、どのような変更があるかを表にまとめます。
要素 | 中身 | 変更の例 |
人(Man) | 作業者・検査員・その力量 | 担当の交代、新人の配置、応援の作業者、夜勤の体制の変更 |
機械(Machine) | 設備・金型・治工具・測定器 | 設備の修理や更新、金型の補修、治具の作り直し、設定の変更 |
材料(Material) | 原材料・部品・副資材 | 仕入先や産地の変更、材質や規格の変更、ロットの切り替え |
方法(Method) | 作業手順・加工条件・検査方法 | 手順書の改訂、温度や速度などの条件の変更、検査の頻度の変更 |
人の変更は見落とされやすい項目です。手順書が同じでも、慣れた作業者が無意識にしていた確認が、交代した人には伝わっていないことがあるためです。
5M1E・6Mとの違い
4Mに Measurement(測定)を足したものが5M、さらに Environment(環境)を足したものが5M1Eです。測定器の更新や検査方法の変更、温度や湿度、工場の移転などの環境の変化も、品質に響くことがあるため、扱う製品によっては5M1Eで管理します。6Mは、5Mに Management(管理)や Money(お金)を足すなど、会社や文献によって中身が違います。
どの枠を使うかよりも、自社の不良の原因になりやすい要素が漏れなく入っているかを確かめることが大切です。測定や環境の変化で不良が出た経験がある工場なら、最初から5M1Eで台帳を作っておくと、あとから項目を足す手間が省けます。
変更管理と変化点管理の違い
計画して行う変更を管理するのが「変更管理」、突発的に起きた変化(作業者の急な欠勤、設備の故障、材料の不具合など)を管理するのが「変化点管理」と分けて呼ぶことがあります。計画した変更は前もって影響を見積もれますが、突発的な変化はその場で判断することになるので、変化点の扱い方を事前に決めておく必要があります。
4M変更を管理する目的とISO 9001の要求
4M変更を管理する一番の目的は、変更による品質のトラブルを前もって防ぐことです。あわせて、トラブルが起きたときに「いつ・何を変えたか」をすぐたどれるので、原因の特定が早くなり、影響の出た製品の範囲を絞り込めます。
品質マネジメントシステムの規格 ISO 9001:2015(日本では JIS Q 9001:2015)も、変更の管理を求めています。製造やサービス提供に関する変更は 8.5.6「変更の管理」で扱われ、要求事項への適合を保つために必要な程度まで変更をレビューし、管理することと、レビューの結果・変更を許可した人・必要な処置を文書化した情報として残すことが求められています。品質マネジメントシステムそのものの変更は 6.3、設計・開発の変更は 8.3.6 です。自動車の業界向けの IATF 16949 には、さらに細かい変更管理の項目があります。
規格の要求のほかに、取引先との品質の取り決めで、4M変更を事前に申請し承認を得ることが定められている場合も多くあります。自社の手続きを作るときは、規格と取引先の取り決めの両方を確かめておきます。
4M変更管理の進め方(5つのステップ)
4M変更管理は、次の5つのステップで進めます。

1. 変更点を洗い出す
これから何を変えるのかを、4つのMの枠に沿って書き出します。設備の更新のように1つの変更に見えても、新しい設備に合わせて手順書と加工条件が変わり、操作する人も新しく覚える、というように複数のMにまたがることがあります。
2. 影響を見積もる
変更によって、どの製品の、どの品質特性(寸法・外観・強度など)に影響が出そうかを見積もります。過去に似た変更をしたときの記録があれば、ここで最も役に立ちます。影響が大きいと判断した変更は、試作や評価をしてから進めます。
3. 対策を決めて承認を得る
見積もった影響に対して、検査を一時的に増やす、初物を全数確かめる、作業者に立ち会う人を付ける、といった対策を決めます。社内の承認者を決めておき、取引先への申請が要る変更なら、この段階で申請して承認を得ます。
4. 実施して初期管理をする
変更を実施したら、しばらくの間は検査の頻度を上げるなどして、変更後の品質が安定しているかを見ます(初期流動管理と呼ぶ会社もあります)。いつまで見るか、何を満たせば通常の管理に戻すかを、前もって決めておきます。
5. 記録して残す
変更の内容、見積もった影響、対策、承認した人、初期管理の結果を記録します。ここで多くの工場が「台帳を閉じて終わり」にしてしまいますが、この記録こそが、次に似た変更をするときのステップ2の材料になります。残し方は後の節で詳しく説明します。
どこまでを4M変更として扱うか
4M変更の管理でよく迷うのが、どこまでを対象にするかです。すべての変更を同じ手続きにすると、書類が増えて現場が回らなくなり、かえって形だけの運用になりがちです。
おすすめは、変更の大きさで手続きを分けることです。たとえば、取引先への申請が要る変更、社内の承認で進める変更、現場の記録だけで進める変更の3段階に分け、どの変更がどれに当たるかを一覧にしておきます。品質特性に直接響く材料や加工条件の変更は重く、同じ力量を持つ作業者どうしの交代は軽く、といった目安を、過去の不良の経験から決めていきます。
判断に迷う変更は、軽い方に倒さず、担当者がひとりで決めない決まりにしておくと安心です。迷った変更とその判断も記録しておけば、一覧を見直すときの材料になります。
4M変更の記録に書く項目
変更管理の台帳に書く項目の例を表にまとめます。項目の名前は会社によって違いますが、次の人が読んで判断に使えるかという目で選びます。
項目 | 書くこと |
変更の区分 | 人・機械・材料・方法(測定・環境)のどれか |
変更の内容 | 何を、何から何へ変えたか |
理由 | なぜ変えたのか |
対象 | 影響する製品・工程・ライン |
見積もった影響 | どの品質特性に、どんな影響が出そうか |
対策 | 検査の追加、初物の確認、立ち会いなど |
承認 | 承認した人と日付、取引先への申請の有無 |
初期管理の結果 | いつまで見たか、何が分かったか |
次の人へのメモ | 次に同じ変更をするときに見るべき所、気をつけること、詳しい人 |
最後の「次の人へのメモ」は、一般的な台帳の様式にはあまり見かけない項目ですが、記録を知識として使うために一番効く欄です。
たとえば、こういう場面を考えてみます(想定の例です)。樹脂部品の工程で、材料の仕入先のロットが切り替わったとします。台帳には「材料ロット切替・外観検査を初回3ロット全数」とだけ書かれていましたが、次の人へのメモの欄に「前回の切り替えでは、乾燥時間を標準のままにして表面に銀色の筋が出た。新しいロットは含水が多めのことがあるので、乾燥を確かめる。詳しいのは成形の〇〇さん」と書いてあれば、次の担当者は同じ失敗をせずにすみます。
記録を次の変更に活かす残し方
4M変更の記録は、書いた時点では手続きのための書類です。それを、次に似た変更をする人が引ける知識にするには、残し方にもうひと工夫が要ります。

なぜ変更の記録は読まれないのか
変更の記録が読み返されない理由は、大きく2つあります。1つは、記録が帳票の束やファイルサーバーの奥にあって、次の担当者がその存在を知らない、または探し方が分からないことです。もう1つは、記録に「何をしたか」は書いてあっても、「なぜそう判断したか」「何に気をつけたか」が書かれておらず、読んでも次の判断に使えないことです。
後者は、ベテランの頭の中にある判断の手がかり、いわゆる暗黙知が記録から抜け落ちている状態です。暗黙知の考え方は暗黙知とは?形式知との違いとSECIモデルの記事で、ベテランから話を引き出す聞き方は技術継承ができない理由の記事で詳しく説明しています。
「次の人が聞ける形」に書き足す3つのこと
記録を次の判断に使えるものにするには、変更の事実に加えて、次の3つを書き足します。
- 何を見て影響を判断したか(見た数値、比べた過去の記録、現物の様子)
- 何が想定と違ったか(初期管理で気づいたこと、やり直したこと)
- 次に同じ変更をするときに誰に聞けばよいか
この3つは、トラブルのあとに書く再発防止の報告書とも共通しています。報告書の書き方は再発防止策の書き方の記事にまとめました。担当の交代という「人」の変更そのものに備えるなら、業務引継書テンプレートの記事の7項目も使えます。
社内の資料から答えるAIに読ませる
記録を探せる所に残す方法として、社内の資料から答えるAIに読ませる、という選び方もあります。変更の台帳、再発防止の報告書、手順書を読み込ませておけば、「この材料の仕入先を切り替えたとき、前に何が起きたか」と聞くだけで、関係する記録を引用つきで返せます。作り方の全体は社内資料で答えるAIの作り方の記事で説明しています。
ここで大切なのは、AIに読ませれば何でも答えられるわけではない、という点です。記録に書かれていないことはAIも答えられません。だからこそ、前の節の「次の人へのメモ」を書く習慣が先にあり、AIは書いた記録を必要な人の手元まで届ける役目を担う、という順番で考えます。答えられなかった質問を拾い、詳しい人に聞いて記録に足していけば、台帳は少しずつ厚くなっていきます。
まとめ
4M変更管理のポイントを振り返ります。
- 4M変更は、人・機械・材料・方法の変更を管理すること。必要なら測定・環境を足して5M1Eで見る
- ISO 9001:2015 の 8.5.6 は、変更のレビューと管理、その結果を文書化した情報として残すことを求めている
- 進め方は、洗い出す→影響を見積もる→対策と承認→実施と初期管理→記録して残す、の5ステップ
- どこまで管理するかは、変更の大きさで手続きを3段階ほどに分けて決める
- 記録には「次の人へのメモ」を書き足し、次に同じ変更をする人が探せる所に残す
デイワンの相棒AIは、変更の記録や報告書、手順書などの社内の資料から引用をつけて答え、答えられなかった質問を懸案として残します。工場に眠っている変更の記録を、次の判断に使える形にしたい方は、お気軽にご相談ください。
あわせて読みたい:確認不足によるミスを仕組みで防ぐ方法、新人教育の進め方
よくある質問
- 4M変更とは何ですか?
- 製品の品質を左右する人(Man)・機械(Machine)・材料(Material)・方法(Method)の4つの要素のいずれかを変えることです。変更点を前もって洗い出し、影響を見積もってから実施することで、変更による品質のトラブルを防ぎます。
- 4Mと5M1Eの違いは何ですか?
- 5M1Eは、4Mに測定(Measurement)と環境(Environment)を足したものです。測定器の更新や温度・湿度の変化が品質に響く製品では、5M1Eで管理すると漏れを減らせます。
- 4M変更はどこまで管理すればよいですか?
- すべてを同じ手続きにせず、取引先への申請が要る変更、社内の承認で進める変更、現場の記録だけで進める変更のように、大きさで段階を分けて決めます。迷う変更は担当者ひとりで決めない決まりにしておくと安心です。
- 4M変更の記録はISO 9001で求められていますか?
- ISO 9001:2015 の 8.5.6「変更の管理」は、製造やサービス提供に関する変更をレビューして管理し、レビューの結果や変更を許可した人、必要な処置を文書化した情報として残すことを求めています。取引先との取り決めも合わせて確かめます。
- 変更の記録を次に活かすにはどうすればよいですか?
- 何を見て影響を判断したか、何が想定と違ったか、次に誰に聞けばよいかを書き足し、次に同じ変更をする人が探せる所に残します。社内の資料から答えるAIに読ませると、記録を知らない人にも届きます。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






