コア人材とは?定義と役割、辞めても判断が会社に残る育て方|デイワンの考え

コア人材の意味と役割、フロー人材との違いを整理したうえで、コア人材に仕事が集まるほど会社が弱くなる理由を、厚労省の調査から読み解きます。コア人材の判断を会社の資産に変えるという当社の考えと、始めるための4つの手順を紹介します。
「うちのコア人材は誰か」と聞かれて、すぐに何人かの顔が浮かぶ会社は多いはずです。難しい取引先との交渉、トラブルが起きたときの判断、新しい仕事の段取りなど、大事な場面になるほど同じ人に声がかかり、その人が休んだり辞めたりすると、仕事が止まってしまいます。
この記事では、コア人材の意味と役割を整理したあと、コア人材に仕事が集まるほど会社が弱くなる理由を、厚生労働省の調査から読み解きます。そのうえで、コア人材をどう育て、どう守るかについて、ベテランの判断の聞き取りをAIで試してきた当社の考えをお伝えします。
当社の考えは、コア人材を「囲い込む人」ではなく、「判断を会社に残していく人」として扱うことです。コア人材の価値は、その人の頭の中にある判断にあります。それを本人しか使えない状態のままにせず、聞かれたら誰でも引ける形にしていくことが、コア人材を育て、守ることにもつながると考えています。
コア人材とは|会社の中核を担い、代わりのききにくい人材
コア人材とは、会社の事業の中核を担い、成果に大きく関わる人材のことです。法令などで決まった定義はなく、会社によって指す範囲は違いますが、一般には次のような人を指します。
- 自社の業務や取引先の事情に精通している
- 前例のない場面でも、判断して仕事を前に進められる
- 周りの人を巻き込み、チームを動かせる
- 社外から同じ人を採用しようとしても、すぐには見つからない
最後の点が、コア人材をほかの人材と分ける一番の特徴です。経験を重ねるうちに、自社の製品や現場、取引先についての知識と判断が積み上がり、その人にしかできない仕事が増えていきます。
フロー人材との違い
コア人材と対で使われるのが「フロー人材」です。フロー人材は、決まった手順で進められる業務を担う人材を指し、必要に応じて採用や外部への委託で補いやすいのが特徴です。
区分 | 担う仕事 | 代わりの見つけやすさ |
コア人材 | 事業の中核。前例のない判断や、社内外の調整を伴う仕事 | 自社での経験が前提になるため、見つけにくい |
フロー人材 | 手順が決まった業務。定型的な事務や作業 | 採用や外部への委託で補いやすい |
ただし、この区分は人に付くものというより、仕事の中身に付くものだと当社は考えています。同じ人でも、手順で進む仕事と、判断が要る仕事の両方を持っているからです。この見方が、後で述べる当社の考えの出発点になります。
コア人材と、後継者・管理職との違い
コア人材は、役職とは必ずしも一致しません。後継者は社長や部門長など特定のポストを継ぐ人、管理職は部下を持ち組織を動かす役割の人を指します。コア人材は、役職がなくても、現場の判断を一手に担うベテランや、特定の技術に詳しい担当者であることが多くあります。
コア人材に求められる役割
コア人材の役割は、会社の成長の段階によって変わると言われます。創業期は事業そのものを立ち上げ、成長期は仕組みと組織を整え、その先では新しい事業や変化への対応を引っ張る、といった具合です。
段階が変わっても共通しているのは、「前例のない場面で判断すること」と「その判断を周りに渡すこと」の2つだと当社は考えています。前者はどのコア人材も担っていますが、後者は忙しさに押されて後回しになりがちです。判断がその人の中にとどまったままだと、会社が大きくなるほど、コア人材に仕事が集まっていきます。
コア人材に頼るほど、会社が弱くなる理由
厚生労働省が2026年7月31日に公表した「令和7年度 能力開発基本調査」では、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとした事業所が80.1%にのぼりました。問題点の内訳では「指導する人材が不足している」が59.5%で最も多く、「人材育成を行う時間がない」も45.5%ありました。

技能継承に目を向けると、問題があるとした事業所は44.2%で、問題点では「技術・ノウハウ等の伝承に時間がかかり円滑に進まない」が60.6%でした。一方で、技能継承の取組として「退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等を文書化、データベース化、マニュアル化している」事業所は22.0%にとどまります。最も多い取組は「中途採用を増やしている」56.2%、次が「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」54.7%でした。
調査の項目 | 割合 |
人材育成の問題点:指導する人材が不足している | 59.5% |
人材育成の問題点:人材育成を行う時間がない | 45.5% |
技能継承の問題点:伝承に時間がかかり円滑に進まない | 60.6% |
技能継承の取組:中途採用を増やしている | 56.2% |
技能継承の取組:退職者を再雇用し、指導者として活用している | 54.7% |
技能継承の取組:退職予定者のノウハウを文書化・マニュアル化している | 22.0% |
出典:厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』」調査結果の概要(2026年7月31日公表)
この数字から読み取れるのは、多くの会社が、ノウハウを人に持たせたまま守ろうとしている、ということです。人を採る、辞める人に残ってもらう、という手は確かに効きますが、判断がその人の中にあるという状態は変わりません。教える人も時間も足りない中で、コア人材に仕事が集まり、ますます教える時間がなくなる、という循環に入りやすくなります。
コア人材が辞めたときに困るのは、人が1人減ることよりも、その人の判断がまとめて失われることです。属人化した業務を見つけてほどく手順は「属人化を解消する手順と事例」で詳しく書いています。
デイワンの考え1|コア人材の価値は、手順より「判断」にある
コア人材の仕事を分けてみると、手順で進められる部分と、判断が要る部分があります。手順は、時間をかければ資料にでき、ほかの人に渡せます。コア人材にしかできないのは、判断が要る部分のほうです。
当社は、この判断をさらに2つに分けて考えています。1つは、その人の経験や人柄、人間関係に結びついていて、人に付いたままの判断です。もう1つは、「この条件がそろったら止める」「この取引先には先に電話する」のように、言葉にすれば会社に残せる判断です。

層 | 中身の例 | 会社に残せるか |
手順 | 見積はこの順で作る、点検はこの順で回る | 資料にすれば残せる。たいてい何かしら残っている |
会社に残せる判断 | 何を見て異常と判断するか、どの条件で止めるか、誰に先に相談するか | 聞き取れば言葉になり、残せる。ただし聞かれない限り出てこない |
人に付く判断 | 長年の信頼関係にもとづく交渉、その人だから通る調整 | 残しにくい。任せる経験を通じて人から人へ渡す |
多くの会社で失われているのは、2つ目の「会社に残せるのに、残っていない判断」です。本人にとって当たり前になっているため、資料を作ろうとしても手順や心構えしか出てこず、判断の部分は言葉にならないまま残ります。こうした言葉にしにくい知識(暗黙知)については、「暗黙知とは?形式知との違いとSECIモデル」で詳しく書いています。
デイワンの考え2|判断は、書いてもらうより聞き取る
コア人材に「判断のポイントを書き出してください」と頼んでも、うまくいかないことがほとんどです。忙しくて時間が取れないうえに、白紙に向かって思い出せるのは、すでに意識している手順だけだからです。
当社は、熟練者の判断を出来事に沿って聞き取る CDM(Critical Decision Method)という手法の考え方にならい、1つの場面について「何を見ていたか」「ほかに何を考えたか」「最後に何で決めたか」を順に聞く方法を使っています。この聞き方で、どのくらいの判断が出てくるかを試しました。
試したのは、架空の食品工場の設備保全のベテランです。ベテラン役はAIが演じ、言葉になっていない知識を9つ持たせ、聞かれたときだけ思い出す設定にしました。
聞き方 | 出た | 一部 | 出ない |
6つの問いの表をベテランが自分で埋める | 1 | 4 | 4 |
AIが1回で聞き取る | 7 | 0 | 2 |
聞く幅を決めて、AIが5回に分けて聞き取る | 8 | 0 | 1 |
表を自分で埋める方法では、細かい手がかりや決め手が抜けました。AIが場面ごとに聞き取ると、判断の中身が具体的に出てきて、幅を決めて分けて聞くと9つのうち8つが出ています。ベテラン役もAIで、それぞれ1回ずつの試しなので、実際の人で同じ差が出るかは確かめていません。それでも、判断は「書いてもらう」より「聞き取る」ほうが出てくるという手応えは、当社の考えの土台になっています。試しの中身は「技術継承ができない理由と、ベテランが辞める前にAIで聞き取る方法」で紹介しています。
聞き手をAIにすると、コア人材の負担も変わります。本人は質問に答えるだけでよく、まとめる作業はAIが受け持つので、「忙しくて書く時間がない」という壁を下げられます。
デイワンの考え3|コア人材を「囲い込む」より「判断を会社に残す人」にする
コア人材を守る方法としては、待遇を上げる、重要なポジションに就ける、といった定着策がよく挙げられます。どれも大切ですが、それだけでは、判断がその人の中にあるという状態は変わりません。
当社は、コア人材の役割に「判断を会社に残すこと」をはっきり加えることを勧めています。具体的には、周りの人が困ったときにまず社内の資料に聞き、資料で答えられなかった質問だけがコア人材に届き、コア人材が答えた中身を確かめて資料に足す、という流れを作ります。

段 | 起きること |
1. 周りの人が聞く | 困ったら、まず社内の資料(またはそれをもとに答えるAI)に聞く |
2. 答えられない質問が残る | 資料に答えが無かった質問が、一覧に残る |
3. コア人材に聞き取る | 残った質問だけを、場面ごとにコア人材に聞き取る |
4. 確かめて資料に足す | コア人材が中身を確かめ、資料に足す。次からは資料が答える |
この流れでは、同じ質問が何度もコア人材に来ることが減り、空いた時間を、本当にその人にしかできない仕事に使えます。コア人材にとっても、自分の判断が会社の資産として残ることは、仕事の成果として見えるものになります。判断を会社に残したことを評価に入れれば、「教えると自分の価値が下がる」という心配も減らせるはずです。
この流れを回すうえで大事なのは、資料が答えられなかった質問を捨てずに残すことです。答えられなかった質問は、まだ言葉になっていない判断がどこにあるかを示す手がかりになります。集める側と使う側をつなぐ考え方は「ナレッジ共有が難しいのはなぜ?」でも書いています。
それでも、コア人材は人が育てる
判断を資料に残しても、それだけで次のコア人材が育つわけではありません。判断は、知っているだけでは身につかず、自分で決めて、外れたり当たったりする経験を重ねて初めて自分のものになります。
ですから、資料やAIが受け持つのは「判断の材料を渡す」ところまでで、「判断を任せる」ところは人が設計する必要があります。小さな案件から任せ、結果を一緒に振り返り、任せる範囲を広げていく。表の3つ目にあった「人に付く判断」も、この任せる経験を通じてしか渡りません。
聞き取った判断が残っていると、この振り返りの質も変わります。「あのときコア人材は何を見ていたか」が言葉になっていれば、次の担い手は自分の判断と比べることができ、コア人材も「どこが違ったか」を具体的に伝えられます。ベテランの判断を次に渡すことについては「後進の育成とは?育たない本当の理由と、ベテランの判断を次に渡すためのデイワンの考え」でも書いています。
コア人材の判断を会社に残す4つの手順
全社で大きな計画を立てるより、1人のコア人材、1つの業務から小さく始めるほうが続きます。始めるときは、次の4つの手順がおすすめです。
1. いなくなると困る人と業務を挙げる:休んだら止まる業務、同じ人に質問が集まる業務から、1つを選ぶ
2. 手順と判断を分ける:手順は今ある資料で渡し、資料に無い「何を見て、何で決めたか」を聞き取りの対象にする
3. 場面ごとに聞き取る:困った出来事を1つ選び、そのとき何を見ていたか、最後に何で決めたかを聞く。1回で全部を出そうとせず、幅を決めて分ける
4. 任せて、答えられなかった質問から次を決める:聞き取った内容を資料にし、ほかの人に小さく任せる。資料で答えられなかった質問を、次の聞き取りの種にする
退職や異動の日が決まっている場合は、業務の引き継ぎとあわせて進めると無駄がありません。聞き取りに使える項目とプロンプトは「業務引継書テンプレート|AIに聞き取らせて作る、後任が困らない書き方」に載せています。
まとめ|コア人材を守るとは、その人の判断を会社に残すこと
コア人材とは、会社の事業の中核を担い、代わりのききにくい人材のことです。厚生労働省の調査では、技能継承の取組として中途採用や退職者の再雇用を挙げる事業所が5割を超える一方、退職予定者のノウハウを文書化・マニュアル化している事業所は22.0%にとどまりました。多くの会社が、判断を人に持たせたまま守ろうとしているのが実情です。
- コア人材の価値は、手順より「判断」にある
- 判断には「人に付く判断」と「会社に残せる判断」があり、失われやすいのは後者
- 判断は書いてもらうより、場面ごとに聞き取るほうが出てくる
- コア人材の役割に「判断を会社に残すこと」を加え、任せる経験は人が設計する
当社が開発している「相棒AI」は、社内の資料から引用をつけて答え、答えられなかった質問を懸案として残すことで、どの判断がまだ言葉になっていないかを見えるようにします。コア人材の判断を会社に残す仕組みづくりにお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
あわせて読みたい:人材育成とは?、ナレッジとは?ナレッジマネジメントの進め方
よくある質問
- コア人材とは、どういう意味ですか?
- 会社の事業の中核を担い、成果に大きく関わる人材のことです。法令などで決まった定義はなく会社によって範囲は違いますが、自社の業務に精通し、前例のない場面でも判断して仕事を進められ、社外から同じ人を見つけにくい人を指すのが一般的です。
- コア人材とフロー人材の違いは何ですか?
- コア人材は事業の中核で判断や調整を伴う仕事を担い、代わりが見つけにくい人材です。フロー人材は手順が決まった業務を担い、採用や外部への委託で補いやすい人材です。同じ人でも両方の仕事を持っているため、人より仕事の中身で分けて考えると整理しやすくなります。
- コア人材が辞めると、何が一番困りますか?
- 人が1人減ることよりも、その人の頭の中にあった判断がまとめて失われることです。厚生労働省の令和7年度 能力開発基本調査では、退職予定者のノウハウを文書化・マニュアル化している事業所は22.0%にとどまり、多くの会社で判断が人に付いたままになっています。
- コア人材の判断は、どうすれば会社に残せますか?
- 書き出してもらうより、困った出来事を1つ選び「そのとき何を見ていたか」「最後に何で決めたか」と場面ごとに聞き取るほうが言葉になりやすくなります。資料で答えられなかった質問を残し、それだけをコア人材に聞き取って資料に足していくと、本人の負担も抑えられます。
- コア人材の育成は、AIに任せられますか?
- AIが受け持てるのは、コア人材の判断を聞き取ってまとめ、周りの人が調べられる形にするところまでです。判断を任せ、結果を一緒に振り返る経験は人にしか作れないため、次のコア人材を育てる部分は上司やベテランが設計する必要があります。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






