DX推進とは?簡単に言うと何か、進め方の5段とDX人材の考え方|中堅企業が最初の1件を選ぶまで

DX推進とは何かを簡単に解説し、IT化との違い、IPA「DX動向2025」の数字から見える進まない理由、進め方の5段、DX人材を社内で立てる役と外に頼む役の分け方を紹介します。中堅企業が最初に取り組む1件の選び方まで分かります。
目次
1.DX推進とは|簡単に言うと「デジタルで、仕事のやり方と稼ぎ方を変え続けること」
1-1.IT化・デジタル化との違い
2.DXの今|IPA「DX動向2025」の数字から見えること
3.DX推進が進まない4つの理由
3-1.1. ツールを入れることが目的になる
3-2.2. 成果を測る数字を決めていない
3-3.3. 業務と技術をつなぐ人がいない
3-4.4. 古いシステムと、人に頼った仕事が残っている
4.DX推進の進め方|中堅企業向けの5段
4-1.1段目:困りごとを集める
4-2.2段目:1件だけ選ぶ
4-3.3段目:目的と数字を決める
4-4.4段目:小さく作って、現場で使う
4-5.5段目:数字で確かめて、直す
5.DX人材とは|社内で立てる役と、外に頼む役
5-1.DX人材を社内で育てるときに気をつけること
6.中堅企業が最初の1件を選ぶときの目安
7.まとめ|DX推進は「1件選んで、数字を置いて、回す」ことから
社長から「うちもDXを進めてほしい」と言われたものの、何から手を付ければよいのか、どこまでやればDXと言えるのかが分からず、困っている担当の方は少なくないと思います。システム部門がない会社では、総務や経営企画の方が兼務で任されることも多く、相談できる相手もいないまま、まずはツールを比べるところから始めてしまいがちです。
この記事では、DX推進とは何かを簡単に整理したうえで、情報処理推進機構(IPA)の調査の数字から日本企業のDXがどこでつまずいているかを読み解き、中堅企業が無理なく進めるための5つの段と、DX人材の考え方を紹介します。
DX推進とは、大きな計画を立てることではなく、業務を1つ選んで目的と数字を決め、デジタルで変えて、結果を見ながら直していくことの繰り返しです。最初の1件をどう選ぶかまで、順に見ていきます。
DX推進とは|簡単に言うと「デジタルで、仕事のやり方と稼ぎ方を変え続けること」
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、IPA の『DX白書2023』で次のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(IPA『DX白書2023』2023年3月)
長い定義ですが、簡単に言えば「データとデジタル技術を使って、仕事のやり方と稼ぎ方を変え、それを続けられる会社になること」です。DX推進は、その変化を会社の中で実際に起こしていく取り組みを指します。経済産業省も、経営者に求められる対応を「デジタルガバナンス・コード」にまとめており、2024年9月には「DX経営による企業価値向上」を副題に掲げた3.0版を公表しています。
ここで大事なのは、定義の主語が「企業」で、目的が「競争上の優位性」になっていることです。新しいツールを入れること自体は目的ではなく、変えた結果として、お客様に選ばれる理由や、少ない人数で回る仕組みが残っているかどうかが問われます。
IT化・デジタル化との違い
DXと混同されやすい言葉に、IT化やデジタル化があります。一般に、変化の大きさによって次の3つの段に分けて説明されます。
段 | 何を変えるか | 例 |
デジタイゼーション | 紙やアナログの情報をデジタルにする | 紙の申請書を PDF やフォームにする |
デジタライゼーション | 1つの業務の流れをデジタルで変える | 申請から承認までをシステム上で回す |
デジタルトランスフォーメーション(DX) | 業務・組織・事業のあり方を変える | 集まったデータから、問い合わせへの答え方や売り方を変える |

IT化は、この中の最初の2つに当たることが多い言葉です。紙をなくす、手作業を減らすといったIT化は、DXの土台として欠かせませんが、それだけで終わるとDXとは呼びにくく、変えた業務から何が見えるようになり、次に何を変えるのかまでつながって初めてDXになります。
DXの今|IPA「DX動向2025」の数字から見えること
日本企業のDXがどこまで進んでいるかは、IPA が毎年公表している調査「DX動向」で確かめられます。2025年6月に公表された「DX動向2025」は、日本1,535社・米国509社・ドイツ537社の回答(2025年2月10日〜3月28日)をもとにしており、中堅企業にとって気になる数字がいくつも並んでいます。
項目 | 日本の数字 | 出典の図表 |
何らかの形でDXに取り組んでいる企業 | 77.8%(2022年度は69.3%) | 図表1-1 |
従業員1,001人以上でDXに取り組んでいる企業 | 96.1% | 図表1-2 |
従業員100人以下でDXに取り組んでいる企業 | 46.8% | 図表1-2 |
DXの成果が出ていると答えた企業 | 6割弱(米国・ドイツは8割以上) | 図表1-7 |
成果を測る指標を設定している企業 | 27.4%(米国89.8%・ドイツ82.7%) | 図表1-25 |
DXを推進する人材が「やや」「大幅に」不足 | 85.1% | 図表3-1 |
必要なスキルとその過不足まで把握している企業 | 14.9% | 図表3-12 |
出典: IPA「DX動向2025」(2025年6月26日公表)
まず目につくのは、企業の規模による差です。従業員1,001人以上の企業では96.1%がDXに取り組んでいる一方、100人以下では46.8%にとどまり、IPA も「2倍以上の差がある」と指摘しています。取り組み全体の割合も、2023年度から2024年度にかけては増えておらず、頭打ちの傾向にあるとされています。
もう1つ見ておきたいのは、取り組んでいても成果が見えていない点です。成果が出ていると答えた日本企業は6割弱で、米国・ドイツの8割以上と差があり、「わからない」と答えた企業も多くなっています。成果を測る指標を設定している企業が27.4%にとどまることを合わせると、成果が出ないというより、何をもって成果とするかを決めないまま進めている会社が多いと読むことができます。
DX推進が進まない4つの理由
上の数字と、上位の解説記事でよく挙げられる課題を合わせると、DX推進が進まない理由は大きく4つに整理できます。
1. ツールを入れることが目的になる
「DXを進める」と決めると、最初にチャットツールやクラウドのサービス、生成AIの契約を比べるところから始めてしまうことがよくあります。ツールが入ると一歩進んだように見えますが、どの業務のどんな困りごとを解くために入れたのかが決まっていないと、使う人が増えず、しばらくすると元のやり方に戻ってしまいます。社内で生成AIを入れたのに使われない、という相談の多くもここに原因があり、その切り分け方は「Copilotが使えないと感じる理由と見直し方」でも紹介しています。
2. 成果を測る数字を決めていない
先に見たとおり、成果の指標を設定している日本企業は27.4%です。数字が無いと、うまくいっているのか、どこを直せばよいのかが分からず、経営者に説明もできません。説明できない取り組みは予算が付きにくくなり、やがて止まってしまいます。
3. 業務と技術をつなぐ人がいない
DX動向2025では、日本企業で最も不足している人材は「ビジネスアーキテクト」でした(図表3-4)。目的を決めてから導入し、効果を確かめるまでを、関係者をまとめながら一気通貫で進める人のことで、IPA は、この人材の不足が成果の出にくさにも影響しているのではないかと見ています。技術に詳しい人がいても、業務の困りごとと結びつける人がいなければ、作ったものが現場で使われません。
4. 古いシステムと、人に頼った仕事が残っている
長く使ってきたシステムが複雑になり、中身を知る人が限られていると、新しい仕組みとつなぐことも、止めることも難しくなります。経済産業省が「2025年の崖」として警鐘を鳴らしたのもこの問題です。システムだけでなく、特定の人の頭の中にある判断や手順も同じで、業務のやり方が人に頼っているほど、デジタルに置き換える前の整理に手間がかかります。仕事の属人化をほどく手順は「属人化を解消する手順と事例」に、作った人がいないシステムを引き継ぐ進め方は「他社が作ったシステムの引き継ぎ」にまとめています。
DX推進の進め方|中堅企業向けの5段
DX推進の進め方として、上位の記事では「目的を明確にする」「体制を整える」「計画を立てる」といった段が並びますが、兼務の担当者が一人で進める場合は、もう少し手前から、小さく始めるほうが現実的です。当社は次の5段で考えています。

1段目:困りごとを集める
最初に、現場で「時間がかかっている」「同じことを何度も聞かれる」「あの人がいないと止まる」と感じている業務を集めます。ここでツールの話はしません。部門ごとに1時間ほど話を聞くだけでも、候補は十分に出てきます。
2段目:1件だけ選ぶ
集めた中から、最初に取り組む1件を選びます。選ぶ目安は、困っている人がはっきりしていること、毎週か毎日のように起きていること、うまくいったかを数字で確かめられることの3つです。全社の計画は、1件目の結果が出てから作れば間に合います。
3段目:目的と数字を決める
選んだ業務について、何がどうなれば成功かを決めます。「問い合わせへの回答にかかる時間を半分にする」「月末の集計作業を2日から半日にする」のように、今の数字と目標の数字を並べて書けると理想です。今の数字が分からない場合は、まず1〜2週間、手で数えるところから始めます。
4段目:小さく作って、現場で使う
いきなり大きなシステムを作らず、既にあるサービスや生成AIの組み合わせで試せる形を作り、選んだ業務の担当者に使ってもらいます。試す段(PoC)で止まってしまう例も多いので、作る前に「誰が、いつから、どの業務で使うか」まで決めておきます。PoC が止まる理由と立て直し方は「PoC止まりのAIを立て直すには」で詳しく紹介しています。
5段目:数字で確かめて、直す
3段目で決めた数字を、使い始めてから定期的に見ます。目標に届かなければ、使われていないのか、使われているが効いていないのかを分けて直します。1件目で数字が動いたら、その結果を持って次の業務を選び、少しずつ範囲を広げていきます。
数字の置き方の一例として、当社の「相棒AI」の作りを紹介します。相棒AIは社内の資料から引用を付けて答えるAIで、資料で答えられなかった質問は「懸案」として残り、管理する人が何が聞かれ、何に答えられなかったかを見られるようにしています。社内の問い合わせ対応をDXの1件目に選んだ場合、「答えられなかった質問が月に何件あり、それが減っているか」は、そのまま成果の数字として使えます。
DX人材とは|社内で立てる役と、外に頼む役
DX人材と聞くと、プログラミングやデータ分析ができる専門家を思い浮かべるかもしれません。経済産業省と IPA が定めた「デジタルスキル標準」のうち、DX推進スキル標準では、DXを推進する人材を次の5つの類型に分けています。
人材類型 | 担うこと(IPA「DX動向2025」図表3-3の説明を要約) |
ビジネスアーキテクト | 目的の設定から導入、導入後の効果の確かめまで、関係者をまとめて一気通貫で進める |
デザイナー | 顧客・利用者の視点から、製品やサービスのあり方と作り方の方針を決める |
データサイエンティスト | データを集めて分析する仕組みを設計・実装・運用する |
ソフトウェアエンジニア | 製品やサービスを支えるシステムやソフトウェアを設計・実装・運用する |
サイバーセキュリティ | デジタル環境のサイバーセキュリティのリスクを抑える対策を担う |
この5つを、最初から社内でそろえる必要はありません。中堅企業では、ビジネスアーキテクトだけは社内の人が担い、技術の役は外部と組むという分け方が現実的だと当社は考えています。

理由は、ビジネスアーキテクトに一番必要なのが、業務の中身と社内の人を知っていることだからです。どの業務で誰が困っているか、誰に話を通せば現場が動くかは、外から来た人がすぐにつかめるものではありません。反対に、システムを作る、データを分析する、セキュリティを確かめるといった技術の役は、必要な時期に必要な分だけ外部の力を借りても、成果に大きな差は出にくい部分です。
DX動向2025では、日本企業の85.1%がDXを推進する人材の不足を感じている一方、必要なスキルとその過不足まで把握している企業は14.9%にとどまり、「必要なスキルを把握できていない」企業が57.1%に上っています。人が足りないと感じたら、まず「自社に要るのはどの役か」を上の5つに当てはめてみると、採る人・育てる人・外に頼む役が分けやすくなります。
DX人材を社内で育てるときに気をつけること
社内で育てる場合は、研修を受けさせるだけでなく、学んだことを使う業務を一緒に渡すことが大切です。前の章の5段のうち、1件目を担当してもらうこと自体が、ビジネスアーキテクトの一番の育て方になります。生成AIを使い始めるときは、使ってよい情報と使ってはいけない情報を先に決めておくと、担当者が安心して試せます。決め方は「生成AIの社内ルールの作り方」で、ひな型つきで紹介しています。
中堅企業が最初の1件を選ぶときの目安
ここまでの内容を、最初の1件を選ぶときの目安として並べます。
- 困っている人と、困っている場面がはっきりしている
- 毎日か毎週のように起きていて、効果が早く見える
- 今の数字(時間・件数・回数)を1〜2週間で数えられる
- 社内の資料や記録が、少しでもデジタルで残っている
- 担当者が「これが楽になるなら使いたい」と言っている
- うまくいかなくても、元のやり方にすぐ戻せる
たとえば、こういう場面を考えてみます(想定の例です)。従業員200人ほどの製造業で、総務が受ける社内からの問い合わせ(就業規則、経費の精算、設備の予約など)が1日に20件ほどあり、同じ質問に何度も答えているとします。困っている人(総務の担当)と場面がはっきりしていて、件数は今日から数えられ、答えの元になる規程や手順書もある程度デジタルで残っています。こうした業務は、1件目の候補として扱いやすい形です。
反対に、「全社の基幹システムを作り替える」「データをすべて一か所に集める」といった大きなテーマは、1件目には向きません。いずれ必要になるとしても、小さな1件で数字が動き、社内に「やればできる」という手応えが生まれてから取り組むほうが、予算も人も集めやすくなります。
社内の資料で答えるAIを1件目に考えている場合は、作り方と使われなくなる理由を「社内AIの構築方法」にまとめています。費用の見通しを先に立てたい場合は「AI導入の費用はいくら?」も参考にしてください。
まとめ|DX推進は「1件選んで、数字を置いて、回す」ことから
DX推進とは、データとデジタル技術を使って、仕事のやり方と稼ぎ方を変え続けることです。IPA「DX動向2025」を見ると、全社戦略に基づいて全社的に取り組む企業の割合は米国と同程度になった一方、従業員100人以下の企業では取り組みが半分以下にとどまり、成果を測る指標を置いている企業も3割に届いていません。
- DXは、IT化・デジタル化の先にある「業務・組織・事業のあり方を変えること」
- 進まない理由は、ツールが目的になる・数字を決めない・業務と技術をつなぐ人がいない・古い仕組みと属人化、の4つ
- 進め方は、困りごとを集める→1件選ぶ→目的と数字を決める→小さく作って使う→数字で直す、の5段
- DX人材は、ビジネスアーキテクトを社内で立て、技術の役は外部と組む
全社の計画を立てる前に、まずは社内で困っている業務を1つ選び、今の数字を数えるところから始めてみてください。
当社では、業務の困りごとを伺うところから、最初の1件の選び方、試す仕組みの作り方、数字での確かめ方まで、AIを使ったDXを一緒に進めています。どこから手を付けるか決めかねている段階でも、お気軽にご相談ください。
あわせて読みたい:業務効率化はAIでどこから?、AI研修とは?
よくある質問
- DX推進とは簡単に言うと何ですか?
- データとデジタル技術を使って、仕事のやり方と稼ぎ方を変え、それを続けられる会社になるための取り組みです。ツールを入れること自体ではなく、変えた結果として業務や事業のあり方が変わっているかが問われます。
- DXとIT化の違いは何ですか?
- IT化は、紙をデジタルにする、1つの業務の流れをシステムで回すといった段を指すことが多い言葉です。DXは、その先で業務・組織・事業のあり方まで変えることを指し、IT化はその土台になります。
- DX推進は何から始めればよいですか?
- 現場の困りごとを集め、その中から1件だけ選び、今の数字と目標の数字を決めるところから始めます。小さく作って使い、数字で確かめて直す流れを1件目で回してから、範囲を広げるのが進めやすい形です。
- DX人材とはどんな人ですか?
- 経済産業省とIPAのDX推進スキル標準では、ビジネスアーキテクト・デザイナー・データサイエンティスト・ソフトウェアエンジニア・サイバーセキュリティの5つの類型に分けています。最初から全部をそろえる必要はありません。
- DX人材は社内で育てるべきですか、外部に頼むべきですか?
- 業務と社内の人を知っていることが欠かせないビジネスアーキテクトの役は社内の人が担い、システムを作る・データを分析するといった技術の役は外部と組む分け方が、中堅企業では進めやすいと当社は考えています。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






