AIエージェントとは?生成AIとの違い、業務での使い道と任せる前に決めること

AIエージェントとは何か、生成AI(チャット)との違い、仕組みを、IPAとOWASPの資料をもとに解説します。部署ごとの業務での使い道と向かない業務、任せる前に決める3つのことを、自社の広報や広告の運用をAIエージェントに任せている当社の経験から紹介します。
「AIエージェント」という言葉を、ニュースや取引先の提案で目にする機会が増えました。ChatGPT のような生成AIとは何が違うのか、自社の仕事のどこに使えるのかが分からないまま、言葉だけが先に広がっていると感じている方も多いのではないでしょうか。
調べてみると、上位に並ぶのは大手のIT企業の解説で、仕組みや種類の説明は詳しい一方、自分の会社のどの業務に当てはまるのかまではつかみにくいことがあります。この記事では、公的な資料をもとにAIエージェントの意味と仕組みを整理したうえで、当社が自社の広報や広告の運用をAIエージェントに任せている経験から、業務での使い道と、任せる前に決めておくことを紹介します。
AIエージェントは、目的を渡すと道具を使って作業を進めてくれるAIで、「何をしてよいか」と「どこで人が確かめるか」を先に決めれば、業務の一部を任せられます。反対に、そこを決めずに広い権限を渡すと、間違えたときに作業がそのまま進んでしまうおそれがあります。
AIエージェントとは
情報処理推進機構(IPA)のコラム「SDS技術コラム:AIエージェント」(2025年7月8日公開)は、厳密な定義はまだ定まっていないとしたうえで、AIエージェントを「ユーザーから与えられた指示に基づき、自律的に問題解決やタスク実行を行うソフトウェア」と説明しています。
ここでの要点は「自律的に」と「タスク実行」の2つです。人が1つずつ指示を出すのではなく、目的を渡されたAIが、何をどの順でするかを自分で決め、検索やファイルの読み書き、ほかのサービスへの登録といった道具を使って、作業を最後まで進めていきます。
生成AI(チャット)との違い
同じコラムは、従来の生成AIとAIエージェントを、目的・機能・外部との連携の3つの点で比べています。それをもとに、業務で使う側から見た違いを表にまとめると次のようになります。
生成AI(チャット) | AIエージェント | |
目的 | 文章や答えを作り、人の作業を助ける | 決められた目標を達成するまで作業を進める |
動き方 | 1回の質問に1回答える | 複数の手順を自分で組み立てて順に進める |
外部との連携 | Web検索など一部に限られる | 社内のシステムや外部のサービスを操作する |
作業をする人 | 答えを受け取った人 | AI(人は確かめる) |
たとえば「先月の問い合わせを分類して、表にまとめて共有フォルダに置く」という仕事なら、チャットでは分類の案をもらったあと、表を作って置くのは人の手になります。AIエージェントであれば、問い合わせを読み、分類し、表を作って置くところまでを1つの流れとして任せられます。
なお、ChatGPT や Claude といったチャットのサービスにも、最近はWebを調べたりファイルを作ったりする機能が付き、両者の境目は少しずつ薄れています。名前で区別するより、「答えを返すだけか、道具を使って作業まで進めるか」で見分けると、自社で何を検討すべきかが分かりやすくなります。
よく見る「5つの種類」は気にしなくてよい
AIエージェントの解説では、単純反射型・モデルベース反射型・目標ベース型・効用ベース型・学習型といった分類がよく紹介されます。これはAIの研究で使われてきた考え方の分類で、仕組みを学ぶうえでは役に立ちます。
ただ、業務に使うかどうかを考える段階では、この分類を覚える必要はあまりありません。それより、「どの業務を」「どの道具を使って」「どこまで任せるか」の3点で考えるほうが、導入の検討には直結します。以下では、この3点に沿って説明していきます。
AIエージェントの仕組み
AIエージェントの動きは、目的を受け取り、手順を組み立て、道具を使い、その結果を見て次を決める、という繰り返しで説明できます。

段 | AIがすること | 例(問い合わせの分類) |
目的を受け取る | 人から渡された目的と条件を読む | 「先月の問い合わせを分類して表にする」 |
計画する | 何をどの順でするかを組み立てる | 読む → 分類する → 表を作る → 置く |
道具を使う | 検索・ファイル・社内システムなどを操作する | 問い合わせの記録を読み、表のファイルを作る |
結果を見る | うまくいったかを確かめ、次の手を決める | 分類できない問い合わせがあれば、項目を足して分け直す |
中心にあるのは、ChatGPT や Claude と同じ大規模言語モデルです。言語モデルが「次に何をするか」を考え、使える道具の中から選んで呼び出し、返ってきた結果を読んで、また次を考えます。AIエージェントの力は、言語モデルの賢さだけでなく、どの道具を渡すかで大きく変わります。読むだけの道具しか渡さなければ調べてまとめるところまで、書き込める道具を渡せば登録や送信まで進められます。
この「結果を見て次を決める」繰り返しがあるため、途中で想定と違うことが起きても、AIが自分でやり方を変えて進められます。一方で、同じ理由から、間違った前提のまま作業が先へ進んでしまうこともあります。どこで人が確かめるかを決めておく必要があるのは、このためです。
業務での使い道
AIエージェントに向くのは、手順がある程度決まっていて、いくつかの道具やシステムをまたいで進める作業です。部署ごとに、検討しやすい使い道を挙げます。

部署 | 使い道の例 | 人が確かめる所の例 |
営業 | 商談の前に相手の会社の公開情報を集めて要点をまとめる/商談の記録から次の連絡の下書きを作る | 相手に送る前の文面 |
マーケティング・広報 | 記事の下書き・図・入稿までを進める/決まった時刻に告知を投稿する | 公開する前の中身 |
総務・人事 | 社内の問い合わせに規程を調べて答える/申請の書類の不足を確かめる | 例外の判断・個人の情報の扱い |
経理 | 請求書を読み取って台帳に書き写す/経費の明細の抜けを確かめる | 支払いの実行 |
情報システム | 障害の記録を集めて原因の候補を並べる/アカウントの棚卸しの表を作る | 設定の変更・削除 |
表の右の列のように、どの使い道でも「最後に外へ出る所」「取り消せない所」には人の確認を残しておくのが前提です。社内の資料を調べて答える使い方は、AIエージェントの中でも始めやすい形の1つで、詳しくは「社内AIの構築方法|社内資料で答えるAIの作り方と、使われなくなる理由」にまとめています。
当社がAIエージェントに任せていること
当社では、自社の広報と広告の運用の多くをAIエージェントに任せています。たとえば、このオウンドメディアの記事は、キーワードの調査、構成、本文、図の作成、読むための原稿の作成、記事の管理の仕組みへの下書きの登録までを、AIエージェントが進めています。何本かまとめて作るときは、記事ごとに担当のAIエージェントを分けて同時に進め、最後に別のAIエージェントが全部の下書きを読み戻して確かめる形にしています。
記事の告知は、SNSに毎朝9時に1本ずつ投稿する仕組みをAIエージェントで作りました。投稿する文はあらかじめ人が確かめて並べてあり、決めた本数を出し終えると仕組みが自分で止まります。広告では、キャンペーンや広告文をAIエージェントが設計書から入れますが、入れるときは配信を止めた状態にし、配信を始めるのは人の指示を受けてからにしています。
任せているのは「準備と作業」で、「公開・配信・お金が動く操作」は人が決めています。この線を引いておくと、任せる作業の量を増やしても、取り返しのつかない操作が人の知らないうちに進むことはありません。ただし、試していない作業ではうまくいかないこともあり、つなぐ先のサービスの仕様が変わって道具が止まったことは何度かありました。そのたびに直して使っています。
あわせて読みたい:RAG(検索拡張生成)とは?、業務効率化はAIでどこから?
自社の業務のどこにAIエージェントを使えるか、一緒に整理したい方はご相談ください。
AIエージェントが向かない業務
どんな業務でも任せられるわけではありません。次のような業務は、AIに最後まで任せるより、人が判断し、AIは準備や下調べに使うほうが安全です。
- お金が動く操作(支払い・振込・広告費の増額など)
- 取り消せない操作(データの削除・契約の締結など)
- 相手との関係に関わる判断(顧客への謝罪・値引きの判断など)
- 例外が多く、手順を言葉にしきれない業務
- 答えの根拠を確かめる手段が無い業務
最後の項目は見落とされがちです。AIはもっともらしい間違いをすることがあり、その間違いのまま作業が進むと、気づくのが遅れます。間違いが起きる理由と見抜き方は「AIの間違い(ハルシネーション)はなぜ起きる?業務で見抜く5つの確かめ方と、引用つきで答える仕組み」で書いています。
任せる前に決める3つのこと
セキュリティの団体OWASPは、大規模言語モデルを使うアプリの主なリスクをまとめた一覧(OWASP Top 10 for LLM Applications 2025)で、「LLM06:2025 Excessive Agency(過剰な権限)」を挙げています。AIに与えた権限が大きすぎると、AIの出力が間違っていたり、外から操作されたりしたときに、損害を与える操作がそのまま実行されてしまう、というものです。原因として、要らない機能を持たせていること、必要以上の権限を与えていること、重大な操作を人の承認なしに実行させていることの3つが挙げられています。
この3つの裏返しが、任せる前に決めておくことになります。

決めること | 中身 | 当社のやり方 |
使える道具 | その業務に要る道具だけを渡す | 記事の作成なら、記事の管理の仕組みと画像の置き場だけ |
権限 | 読むだけで済むなら読み取りだけにする | 書き込む道具は、指定を付けたときだけ書き、付けなければ何をするかを出すだけで終わる |
人が承認する所 | 取り消せない操作・お金が動く操作の前で止める | 公開と広告の配信開始は人が行う。お金の動く操作は作業の環境の安全の仕組みが止める |
IPAのコラムも、AIエージェントの課題として、機密情報や個人情報の漏れ、予期しない動き、法令や他者の権利への違反、悪用、想定外の利用料の増加を挙げています。特に、メールやWebページなど外から来た文章を読ませるAIエージェントは、文章の中に紛れ込ませた指示でAIが操られるおそれがあります。この攻撃の仕組みと対策は「プロンプトインジェクションとは|直接と間接の違い、社内資料やメールを読むAIで起きることと3つの対策」で詳しく扱っています。
社内でAIを使うときの決まりがまだ無い場合は、AIエージェントの前に、まず社員がAIをどう使ってよいかを決めておくと、任せる範囲の線も引きやすくなります。決まりの作り方は「生成AIの社内ルールの作り方|そのまま直して使えるひな型(条項の例)つき」にひな型を載せています。
何から始めるか
初めてAIエージェントを使うなら、次の順で小さく始めるのがおすすめです。
1つ目は、読むだけで済む作業から始めることです。資料を集めて要約する、記録を読んで表にまとめる、といった作業なら、間違えても書き換わるものが無く、結果を人が読んで確かめられます。2つ目は、作業の結果を「下書き」として置かせることです。メールの下書き、記事の下書き、台帳への登録の案など、人が見てから確定する形にすれば、書き込みの道具を渡しても影響を抑えられます。3つ目は、回数を決めて試してから広げることです。1件、数件と動かして、思った通りに動くことを確かめてから件数を増やします。
既製のサービスに付いているAIエージェントの機能で足りる場合もあれば、自社のシステムにつなぐために作る必要がある場合もあります。作るときの手順と気をつける点は「AIエージェント開発の進め方|チャットとの違い、任せられる業務と作る5つの手順」で、自分で作るか外に頼むかの目安は「AIで業務自動化を自分で作る前に|自作で足りる範囲と、プロに頼む3つの目安」で整理しています。
まとめ
- AIエージェントは、目的を渡すと道具を使って作業を進めるAIで、答えを返すだけの生成AI(チャット)とは「作業まで進めるか」が違う
- 仕組みは、目的を受け取る → 計画する → 道具を使う → 結果を見て次を決める、の繰り返し。どの道具を渡すかで、できることが大きく変わる
- 向くのは手順が決まっていて道具をまたぐ作業。お金が動く操作・取り消せない操作・相手との関係に関わる判断は人に残す
- 任せる前に、使える道具・権限・人が承認する所の3つを決める
- 始めるなら、読むだけの作業 → 下書きを置かせる作業 → 件数を広げる、の順で小さく
当社は、自社の業務をAIエージェントに任せながら、どこまで任せてどこで止めるかの線を引いてきました。自社の業務のどこに使えそうか、どこで人が確かめるべきかを整理したい場合は、AIソリューション開発のご相談を受けています。導入の前に確かめておくことは、資料「AI導入の前に確かめるチェックシート」にもまとめています。
よくある質問
- AIエージェントとは何ですか。
- 目的を渡すと、何をどの順でするかを自分で組み立て、検索やファイルの読み書き、社内システムの操作といった道具を使って作業を進めるAIです。IPAは「ユーザーから与えられた指示に基づき、自律的に問題解決やタスク実行を行うソフトウェア」と説明しています。
- 生成AI(ChatGPTなど)とAIエージェントの違いは何ですか。
- 生成AIのチャットは質問に答えるところまでで、その答えを使って作業をするのは人です。AIエージェントは道具を使って作業そのものまで進めます。見分けるときは「答えを返すだけか、作業まで進めるか」で考えると分かりやすくなります。
- AIエージェントは業務のどこに使えますか。
- 手順がある程度決まっていて、いくつかの道具やシステムをまたぐ作業に向きます。商談前の情報集め、記事や文書の下書きから登録まで、規程を調べて社内の問い合わせに答える、請求書の読み取りと台帳への書き写しなどが例です。外へ出る所と取り消せない所は人が確かめます。
- AIエージェントに任せないほうがよい業務はありますか。
- 支払いなどお金が動く操作、削除など取り消せない操作、顧客への謝罪など相手との関係に関わる判断、例外が多く手順を言葉にしきれない業務、答えの根拠を確かめる手段が無い業務は、人が判断し、AIは準備や下調べに使うほうが安全です。
- AIエージェントを使う前に何を決めればよいですか。
- 使える道具、権限、人が承認する所の3つです。OWASPは、要らない機能・必要以上の権限・人の承認の無い重大な操作を、AIに権限を与えすぎるリスク(LLM06:2025 Excessive Agency)の原因に挙げています。読むだけの作業から始め、結果を下書きとして置かせる形にすると始めやすくなります。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






