他社が作ったシステムの引き継ぎ|作った人がいない・保守を断られたときの進め方

他社が作ったシステムの引き継ぎで、作った人がいない・保守を断られたときの進め方を解説します。最初に手元にそろえる5つ(ソースコード・管理権限・名義・データ・契約書)と、事実・推測・未確認に分けて現状をつかむ4つのステップ、AIでコードと資料を読み解くと変わることを紹介します。
目次
1.システムの引き継ぎで起きやすい3つの困りごと
1-1.作った人がいない
1-2.保守を断られた
1-3.資料が今の中身と合っていない
2.他社が作ったシステムの保守が断られる理由
2-1.どれくらいの量があるのか、外から分からない
2-2.資料が更新されていない
2-3.人の目で見て回ると、細かいところが抜ける
3.作った人がいないときに、まず手元にそろえる5つ
3-1.1. ソースコード
3-2.2. サーバーとクラウドの管理権限
3-3.3. ドメインと契約の名義
3-4.4. データとバックアップ
3-5.5. 契約書
4.他社が作ったシステムの保守を引き継ぐ4つのステップ
4-1.1. コードと資料を預ける
4-2.2. AIで全体を洗い出す
4-3.3. 事実・推測・未確認に分ける
4-4.4. 続け方を決める
5.AIでコードと資料を読み解くと、何が変わるか
5-1.以前は、細かい所の確かめに時間がかかっていた
5-2.今は、手元のファイルをAIで読んでから話せる
5-3.たとえば、保守を終えると言われた受注のシステムなら
5-4.AIに任せきりにせず、エンジニアが確かめる
6.引き継ぎを相談するときに伝えるとよいこと
6-1.窓口がエンジニアだと、その場で話が進む
7.システムの引き継ぎでよくある質問
7-1.ソースコードが手元に無いときは?
7-2.前の会社と連絡が取れなくなっていたら?
7-3.Excel のマクロや Access で作った仕組みでも引き継げる?
7-4.作り直したほうが早いと言われたら?
7-5.ホームページ(Webサイト)の引き継ぎも同じ進め方でよい?
8.まとめ|他社が作ったシステムの引き継ぎは、全体をつかむところから
社内で使っている業務システムやWebサイトについて、作った会社から保守をやめると言われた、あるいは作った担当者が辞めて中身を説明できる人がいなくなった、という相談は、ある日急に持ち上がります。新しい会社に引き継ぎを頼もうとしても、「他社が作ったものは見られない」と断られたり、見積もりが出るまでに時間がかかったりして、話がなかなか前に進まないことがあります。
引き受ける側が迷うのは、そのシステムに全体でどれくらいの量があり、どこがどう作られているのかが、外からは分からないからです。資料が残っていても、何年も前のまま更新されていないことがあり、それだけを頼りに引き受けるかどうかを決めるのは難しいのが実情です。
この記事では、他社が作ったシステムを引き継ぐときに、まず手元にそろえる5つのものと、事実・推測・未確認に分けて現状をつかむ進め方を、引き受ける側の目線から紹介します。今はAIでソースコードと資料をすべて読めるようになり、作った人がいなくても中身から確かめられる範囲が広がっています。保守を断られて困っているときに、次に何をすればよいかの手がかりにしてください。
システムの引き継ぎで起きやすい3つの困りごと
他社が作ったシステムの引き継ぎで困りごとになりやすいのは、次の3つの場面です。1つだけで済むこともあれば、いくつかが重なって起きることもあります。

作った人がいない
システムを作った開発会社の担当者が辞めていたり、会社そのものと連絡が取れなくなっていたりする場面です。社内でも、発注を担当した人が異動や退職でいなくなり、なぜその作りにしたのか、どこに何があるのかを説明できる人が残っていないことがあります。
動いているうちは困りませんが、不具合が出たときや、法律の改正や取引先の都合で直す必要が出たときに、初めて誰にも聞けないことに気づきます。
保守を断られた
前の会社から「保守を終える」と言われた、あるいは新しい会社に相談したら「他社が作ったものは引き受けていない」と断られた、という場面です。断る側にもそれなりの理由があり、その中身は次の見出しで説明します。
一度断られたからといって、そのシステムが直せないと決まったわけではありません。中身を調べてから判断する会社に相談すれば、引き継げるかどうかを見極めてもらえます。
資料が今の中身と合っていない
設計書や画面の一覧、操作の手順書は渡されたものの、書かれている内容が今の中身と合っていない場面です。納品したときや公開したときに作った資料のまま、その後の追加や手直しが書き足されていないことは珍しくありません。
資料があると安心しがちですが、古い資料を前提に見積もると、作業を始めてから想定していなかった部分が見つかり、日程と費用が膨らむ原因になります。
他社が作ったシステムの保守が断られる理由
引き受ける側から見ると、他社が作ったシステムには、自社で作ったものにはない難しさがあります。作り方は会社ごとに違ううえ、前の会社が作った部分の不具合まで背負うことになるのではという心配もあるため、他社が作ったものは受けないと決めている会社もあります。

当社も他社が作ったWebサイトやシステムを引き継ぐ仕事をしていますが、相談を受けたときに最初に突き当たりやすいのは、次の3つです。
どれくらいの量があるのか、外から分からない
引き継ぎの相談で最初に分からないのは、そのシステムに全体でどれくらいの量があり、どんな画面や機能があるのかです。量が分からなければ、保守にどれくらいの手間がかかるのかを見積もれず、引き受けるかどうかも決められません。
資料が更新されていない
資料が残っていても、更新されていなければ、書かれている内容をそのまま信じることはできません。結局はソースコードを開いて一つずつ確かめることになり、その手間を見込むと、引き受けるのをためらう会社が出てくるのも無理はありません。
人の目で見て回ると、細かいところが抜ける
これまでは、ファイルやページがいくつあるかは人の手で数えられても、一つのページの中で場所によって書体が違っているような細部までは、目で追いきれませんでした。こうした見落としは、作業を始めてから「聞いていなかった違い」として表に出て、手戻りの原因になります。
作った人がいないときに、まず手元にそろえる5つ
引き継ぎ先を探す前に、発注した側で手元にそろえておきたいものがあります。前の会社と連絡が取れるうちにそろえておけば、引き継ぎ先が決まったあとの調べもそれだけ早く進みます。

1. ソースコード
システムの中身そのものなので、どこに最新版があり、本番で動いているものと同じかどうかを確かめます。ソースコードが手に入らないと、中身から確かめることができず、引き継ぎでできることが大きく限られます。納品物にソースコードが含まれていたかは、契約書と納品のときの記録で確かめられます。
2. サーバーとクラウドの管理権限
システムが動いているサーバーやクラウドのサービスに、自社の担当者が管理者として入れるかを確かめます。前の会社の担当者の名前のアカウントでしか入れない状態だと、その人がいなくなった時点で、誰も触れなくなってしまいます。
IDやパスワードは、メールや資料に書いて回さないでください。自社の管理者の権限を新しく作ってもらう形で受け取るほうが安全です。
3. ドメインと契約の名義
Webサイトやシステムの住所にあたるドメイン、サーバー、外部のサービスの契約が、誰の名義になっているかを確かめます。前の会社の名義のままだと、更新の案内が自社に届かずに期限が切れたり、契約を移すときに前の会社の手続きが必要になったりします。
4. データとバックアップ
顧客や取引の記録など、システムにたまっているデータを自社で取り出せるか、バックアップがどこにあり、いつの時点のものかを確かめます。仕組みは作り直せても、データは失うと戻らないので、引き継ぎの話を始める前に控えを取っておくと安心です。
5. 契約書
前の会社との契約書で、ソースコードの権利がどちらにあるか、保守の範囲と終わり方がどう決まっているかを確かめます。権利の扱いは契約の書き方によって変わるため、判断に迷うところは弁護士に確かめてください。
Webサイトの保守で、何を範囲に入れておくとよいかは「【雛形】Webサイトの保守契約書テンプレートを配布!」の記事でも紹介しています。新しい引き継ぎ先と契約するときにも、範囲と終わり方を最初に決めておくと、同じ困りごとを繰り返さずに済みます。
他社が作ったシステムの保守を引き継ぐ4つのステップ
手元にそろえたら、引き継ぎ先と一緒に中身を調べていきます。当社が引き継ぎの相談を受けるときも、いきなり直し始めることはせず、次の4つの順で進めています。

1. コードと資料を預ける
ソースコード、設計書や手順書、前の会社とのやり取りの記録など、残っているものをまとめて引き継ぎ先に渡します。古いと分かっている資料も、捨てずに渡してください。今の中身と比べることで、どこが後から足された部分なのかが見えてくるからです。
2. AIで全体を洗い出す
預かったソースコードと資料をAIですべて読み込み、どんな画面や機能があり、どこがどうつながっているかを洗い出します。人が端から読んでいくと時間のかかる量でも、先に全体の地図を作れるので、どこから手を付けるかを早く決められます。
3. 事実・推測・未確認に分ける
調べた結果は、コードで確かめた事実、コードからそう読めるものの理由までは分からない推測、確かめるのに権限や関係者の話が要る未確認、の3つに分けてまとめます。分けずに伝えると、推測が事実のように受け取られ、後になって話の食い違いを生むからです。
区分 | 意味 | 例 |
事実 | コードや設定で確かめられたこと | 注文の画面から、在庫の数を減らす処理が呼ばれている |
推測 | コードからそう読めるが、なぜそう作ったかは分からないこと | 月末だけ別の計算をしているのは、締め日の都合と思われる |
未確認 | 確かめるのに、権限や関係者の話が要ること | 夜中に動く処理が、外のどのサービスとつながっているか |
表の例は、説明のために作ったものです。未確認の一覧は、そのまま前の会社や社内の担当者に聞くことの一覧になるので、作った人と連絡が取れる場合も、まずここから聞けば、確かめることを絞れて、相手の負担も小さくしやすくなります。
4. 続け方を決める
全体が分かったところで、これからどうするかを決めます。選べる道は、大きく分けて次の3つです。
続け方 | 向いている場面 |
今のまま保守を続ける | 大きな問題が無く、直したい所が小さい |
直しながら使い続ける | 使えてはいるが、古くなった部品や危ない所がある |
作り直す | 中身が古く、直すより作り直すほうが手間が少ない |
残っているコードや資料、決まっている業務の流れを活かせるなら、それに越したことはありません。調べる前から作り直しを勧められたときは、なぜそう判断したのかを聞いてみてください。
AIでコードと資料を読み解くと、何が変わるか
当社の引き継ぎの仕事で大きく変わったのは、最初の「全体をつかむ」ところです。以前と今とでは、作業に入る前に見えている範囲が大きく違います。

以前は、細かい所の確かめに時間がかかっていた
当社でも以前は、人の目で見て回るやり方で、ファイルとページの数を数えるところまではできても、その中身を一つずつ見比べるのは難しく、細かい違いは見切れないまま残りました。見切れなかった違いは、作業を始めてから一つずつ見つかり、そのたびに予定を組み直すことになります。
今は、手元のファイルをAIで読んでから話せる
今は、手元にあるコードと資料をAIで読み、ページの中で場所ごとの違いまで洗い出してから、画面や動きをエンジニアが確かめるやり方に替えています。人の目では見落としやすい細部も、作業に入る前に一覧にできますが、サーバーの設定や外部のサービスなど、手元に無いものは別に確かめます。
作った人がいなくても、中身から全体をつかめるようになったことで、資料が古いシステムでも、引き受けられるかどうかを早く判断できるようになりました。
たとえば、保守を終えると言われた受注のシステムなら
たとえば、こういう場面を考えてみます。社内の受注を管理するWebのシステムについて、作った会社から保守を終えると言われ、社内で発注を担当した人もすでに異動しています。渡されたのは納品のときの設計書と画面の一覧だけで、その後に足した帳票や、取引先ごとの例外の処理は、どこにも書かれていません。
この場合でも、ソースコードがあれば、AIで全体を読み、設計書に載っていない画面や処理がどこにあるか、どの取引先のときだけ動きが変わるかを洗い出せます。設計書と見比べれば、設計書に載っていない処理が見つかり、いつ・なぜ足されたかは変更の履歴や関係者に確かめられるので、聞くべきことを絞ったうえで、社内の担当者や前の会社に確かめられます。
AIに任せきりにせず、エンジニアが確かめる
AIは大量のコードを速く読めますが、読み違えることもあります。また、コードから分かるのは「どう動いているか」までで、「なぜそう作ったか」は、作った人や使っている人に聞かなければ分からないことがあります。
そのため当社では、AIが洗い出した結果をエンジニアが確かめ、分かったことと未確認のことを分けてお伝えしています。社内でAIにソースコードを読ませる場合は、コードの中にパスワードや鍵が書かれていることもあるので、入力した内容が学習に使われない設定かどうかを先に確かめてください。設定の確かめ方は「生成AIに機密情報を学習させない方法」の記事で解説しています。
引き継ぎを相談するときに伝えるとよいこと
引き継ぎ先に相談するときは、次のことが分かる範囲で伝わると、引き受けられるかどうかの判断が早くなります。分からない項目があっても、そのまま「分からない」と伝えてもらえれば十分です。
- 何のためのシステムか(受注の管理、社内の申請、会員向けのサイトなど)
- いつごろ、どこの会社が作ったか
- いま困っていること(直したい不具合がある、保守を断られた、など)
- 手元にあるもの(ソースコード・管理権限・資料)
- 前の会社と連絡が取れるか
- いつまでに何とかしたいか
窓口がエンジニアだと、その場で話が進む
引き継ぎの相談では、窓口の担当者が話を持ち帰り、エンジニアが調べてから返事をする、という往復が何度も挟まると、そのたびに日数がかかります。当社では窓口に立つのがエンジニアでもある代表なので、できることと難しいこと、気をつける点のうち、お話から分かる範囲は、その場でお答えできます。
引き受けられるかどうかのお返事までは無料で、現状の調査が要る場合は、有償になることをご了承いただいてから進めます。いまの状況を、分かる範囲でそのままお聞かせください。
システムの引き継ぎでよくある質問
他社が作ったシステムの引き継ぎについて、よく聞かれる質問に答えます。
ソースコードが手元に無いときは?
まず契約書と納品のときの記録で、ソースコードが納品物に入っていたかを確かめ、入っていれば前の会社に引き渡しを頼みます。どうしても手に入らない場合は、画面の動きや出力されるデータから分かることを探すことになりますが、中身から確かめることはできないので、できることはかなり限られます。
前の会社と連絡が取れなくなっていたら?
サーバーやクラウドの管理権限と、ドメインの名義が自社にあるかを、真っ先に確かめてください。どちらも前の会社の側にしかない場合は、サーバーやドメインを管理している会社に、契約者として手続きできるかを問い合わせることになります。
Excel のマクロや Access で作った仕組みでも引き継げる?
作られた仕組みの種類よりも、中身を読めるかどうかが分かれ目になります。当社の引き継ぎ・立て直しの窓口では、Excel のマクロや Access、FileMaker、kintone で作られた仕組みの相談も受けており、ファイルが手元にあれば、中身を読んでどんな処理をしているかを洗い出せます。
作り直したほうが早いと言われたら?
作り直しが向いている場合もありますが、調べる前に決める必要はありません。全体を洗い出してから、今のまま保守を続ける、直しながら使い続ける、作り直すの3つを比べて決めるほうが、費用と日程の見通しを立てやすくなります。
ホームページ(Webサイト)の引き継ぎも同じ進め方でよい?
基本の考え方は同じで、ファイルやソースコード、サーバーの管理権限、ドメインの名義をそろえるところから始めます。サイトが何で作られているかを先に知りたいときは「このホームページは何で作られてる?」、引き継いだあとの費用の目安は「ホームページの保守費用相場はいくら?」と「ホームページ維持費の内訳と相場を徹底解説」の記事も参考にしてください。
改ざんや乗っ取りが起きているときは、引き継ぎより先に被害を止めることを優先します。手順は「ホームページが乗っ取られた時の対処法」の記事で解説しています。
まとめ|他社が作ったシステムの引き継ぎは、全体をつかむところから
作った人がいない、保守を断られた、資料が今の中身と合っていない、という困りごとは、どれも「全体が分からない」ことから起きています。引き継ぎは直すところからではなく、手元にそろえて全体をつかむところから始めると、一度断られたシステムでも次の一手が見えてきます。
- ソースコード・管理権限・名義・データ・契約書の5つを手元にそろえる
- 古い資料も捨てずに引き継ぎ先へ渡す
- 調べた結果は、事実・推測・未確認に分けて受け取る
- 続け方は、全体をつかんでから3つを比べて決める
保守を断られて困っているときは、まず手元にあるものを書き出してみてください。そのうえで、引き受けられるかどうかを確かめたいときは、当社の引き継ぎ・立て直しの窓口にご相談ください。
この記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。



