業務効率化はAIでどこから?業務改善との違いと、効率化する業務の選び方

AIで業務効率化を進めるとき、最初にどの業務を選ぶかで効き目が変わります。業務改善と業務効率化の違い、生成AIが使われている業務、回数・決まり・間違いの重さ・材料の4つの問いで業務を選ぶ方法と、小さく試す手順をまとめました。
「AIで業務効率化を進めてほしい」と言われたものの、どの業務から手を付ければよいか分からない、という相談はよく聞かれます。生成AIのツールを全社に配ってみたものの、使い道が人によってばらばらで、何が楽になったのか誰も説明できない、という声もあります。
AIで業務を楽にできるかどうかは、ツールの良し悪しより、最初にどの業務を選ぶかで大きく変わります。この記事では、業務改善と業務効率化の違いを整理したうえで、生成AIがいま実際にどの業務で使われているかを公的な調査で確かめ、手元の業務の中から最初の1つを選ぶための4つの問いと、選んだ業務を小さく試す手順をまとめます。
結論を先に書くと、最初にAIに任せるのは、回数が多く、やり方がある程度決まっていて、間違えても人が気づいて直せて、材料が文字で手元にそろっている業務です。そして、その業務をAIにする前に、やめられないか、まとめられないかを先に確かめると、無駄な仕組みを作らずに済みます。
業務改善とは|業務効率化との違い
業務改善とは、仕事のやり方を見直して、ムリ(負担が大きすぎる)・ムダ(要らない手間)・ムラ(日や人によるばらつき)を減らし、品質・時間・費用のどれかを良くすることを指します。対象は手順だけでなく、役割の分け方、使う書類、判断の基準まで含みます。
業務効率化は、その中でも「同じ成果を、より少ない時間や手間で出す」ことに絞った言い方です。つまり、業務改善のほうが広く、業務効率化はその一部と考えると分かりやすくなります。品質を上げるための見直しや、ミスを減らすための確認の追加は、時間が増えても業務改善には入りますが、業務効率化とは呼びにくいものです。
見直しの考え方として一般に知られているのが、ECRS(イクルス)です。やめられないか(Eliminate)、まとめられないか(Combine)、順番や担当を入れ替えられないか(Rearrange)、もっと簡単にできないか(Simplify)の順に考えるもので、上から順に効き目が大きいとされます。AIは主に最後の「簡単にする」の手段で、AIを入れる前に、やめる・まとめるが残っていないかを見ることが、この記事の後半の話につながります。
生成AIはいま、どの業務で使われているか
総務省の「令和8年版 情報通信白書」によると、2025年度の企業向けの調査で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた日本の企業は86.4%でした。前の年度の調査から大きく上がっています。
業務の種類ごとに見ると、日本で利用の割合が最も高いのは「議事録・メール作成補助」で約7割、次いで「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割でした。導入の効果を実感していると答えた割合も「議事録・メール作成補助」が約7割で、ほかの種類より目立って高い結果になっています。一方で、日本はほかの国と比べると、業務の種類ごとに「未導入」や「わからない」と答える割合が高いとも書かれています。
この結果から読み取れるのは、文章の下書きのように人が最後に読んで直せる業務では効き目が実感されやすく、それ以外の業務では、まだ使い道を決めきれていない会社が多いということです(白書の数字をもとにした当社の解釈です)。
出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書」第1部第2章「生成AIの業務利用状況」(図表Ⅰ-2-1-6・Ⅰ-2-1-7)
AIで効率化しやすい業務・しにくい業務
生成AIが得意なのは、文字を読んでまとめる、文字を下書きする、決まった形に整える、といった作業です。反対に、1件の間違いも許されない数字の突き合わせや、人の判断そのもの、相手との関係を作る仕事は、AIに任せきりにしにくい作業です。

効率化しやすい業務 | 任せきりにしにくい業務 |
議事録・メール・報告書の下書き | 金額・数量の突き合わせ |
長い資料や問い合わせの要約 | 契約や採用などの最終判断 |
社内の資料を探して答える | 顧客との交渉や関係づくり |
決まった形の書類への書き写し | 法律や安全に関わる判断 |
ただし、右の列の業務でも、全部をあきらめる必要はありません。金額の突き合わせなら、AIが食い違いの候補を挙げ、人が確かめて決める、という分け方ができます。業務を丸ごとAIに渡すのではなく、業務の中のどの手順をAIにするかで考えると、使える場所が広がります。
どの業務からAIにするか|4つの問いで選ぶ
どの業務から始めるかは、次の4つの問いで手元の業務を比べると決めやすくなります。業務の名前を10個ほど書き出し、1つずつ当てはめてみてください。

1 回数が多いか
月に1回しかない業務を半分の時間にしても、減る時間はわずかです。毎日、あるいは週に何度も繰り返す業務ほど、少しの短縮が積み重なります。担当者が「毎回同じことをしている」と感じている業務は、最初の候補になります。
2 やり方がある程度決まっているか
手順や書き方の型がある業務は、AIに指示を出しやすく、出てきたものの良し悪しも判断しやすくなります。逆に、人によってやり方が違う業務は、AIにする前にやり方をそろえる必要があり、ここで時間がかかります。やり方が特定の人の頭の中にしかない場合は、「属人化を解消する手順」で書いたように、先に書き出すところから始めます。
3 間違えたときの重さ
AIの出力には間違いが混じることがあります。下書きのように人が読んでから使う業務なら、間違いはその場で直せますが、そのまま顧客に届く、お金が動く、記録に残るといった業務では、間違いの影響が大きくなります。最初の1つは、間違えても人が気づいて直せる業務を選ぶと安全です。AIが間違える仕組みと防ぎ方は、「AIの間違い(ハルシネーション)はなぜ起きる?」にまとめています。
4 材料が文字で手元にあるか
生成AIが働くには、読ませる材料が要ります。過去の報告書、規程、マニュアル、問い合わせの記録などが文字で手元にあれば、AIはそれをもとに下書きや答えを作れます。紙のまま、あるいは担当者の記憶の中にしか無い場合は、材料をそろえる手間が先にかかります。
点数を付けて、最初の1つを決める
4つの問いに、当てはまる2点・少し当てはまる1点・当てはまらない0点を付け、合計の高い業務から候補にします。たとえば、こういう場面を考えてみます(想定の例です)。
業務(想定の例) | 回数 | 決まり | 間違いの重さ | 材料 | 合計 |
打合せの議事録づくり | 2 | 2 | 2 | 2 | 8 |
社内からの問い合わせへの回答 | 2 | 1 | 1 | 1 | 5 |
月末の請求金額の突き合わせ | 1 | 2 | 0 | 2 | 5 |
新しい取引先への提案書づくり | 1 | 0 | 1 | 1 | 3 |
「間違いの重さ」は、間違えても直しやすいほど点を高くします。この例では議事録が最初の候補になり、社内の問い合わせは、材料(規程やマニュアル)を整えてから2つ目に回す、という順番が見えてきます。点数はあくまで比べるための目安で、合計が同じなら、担当者が一番困っている業務を先にすると協力も得やすくなります。
AIにする前に、業務改善を先に当てる
候補が決まったら、すぐにAIの仕組みを作るのではなく、その業務をECRSの順に見直します。誰も読んでいない報告書なら、AIで速く書けるようにするより、書くのをやめるほうが効き目は大きくなります。同じ内容を3つの書類に書いているなら、まず1つにまとめます。

- やめる: 誰も使っていない書類や確認は、AIにする前にやめる
- まとめる: 同じ内容を何か所にも書いているなら、1か所にまとめる
- 入れ替える: 確認の順番や担当を見直す
- AIに任せる: 残った手順のうち、下書き・要約・探す・書き写すをAIにする
この順番を飛ばすと、要らない業務を速くするための仕組みに費用をかけてしまうことがあります。AIは、見直したあとに残った手順に当てると考えると、作る量も少なく済みます。
選んだ業務を小さく試す5つの手順
選んだ業務は、いきなり全社に広げず、少人数で試してから広げます。
1つ目に、今その業務に何分かかっているかを、数件だけでも測っておきます。比べる元が無いと、楽になったかどうかを説明できません。2つ目に、AIに任せる手順と、人が確かめる所を決めます。3つ目に、使ってよい情報と使ってはいけない情報を決めます。社内の決まりがまだ無ければ、「生成AIの社内ルールの作り方」を参考にしてください。
4つ目に、担当者2〜3人で2〜4週間ほど使い、かかった時間と、直した回数を記録します。5つ目に、結果を見て、続ける・やり方を変える・やめるのどれかを決め、続けるなら手順を書き残してから次の業務へ広げます。
当社でも、オウンドメディアの記事を作る作業のうち、下書きを Google ドキュメントに入れる、画像を作る、Box に置く、サイトに下書きで入稿する、といった手順を、AIに作らせた小さな道具に分けて任せています。どの道具も1つの手順だけをするように分け、外に書き込む前には人が確かめる所を残しました。業務を丸ごと任せるのではなく、手順ごとに切り分けて、人が確かめる所を決めておくことで、止まったときにどこを直せばよいかも分かりやすくなっています。
AIで業務効率化するときにつまずきやすい所
試しはうまくいったのに、広げる段階で止まることがあります。よく見かけるのは、次の3つです。
1つ目は、試した人しか使い方が分からないことです。指示の書き方や確かめ方が担当者の頭の中にしか無いと、ほかの人が使ったときに同じ結果が出ません。2つ目は、AIに読ませる材料が古い、散らばっていることです。規程の古い版と新しい版が混じっていると、AIは古いほうを拾うことがあります。3つ目は、ほかのシステムとつなぐ段階で、確かめることが一気に増えることです。顧客管理や会計に自動で書き込む仕組みは、間違えたときに戻せないことがあり、設計と確かめ方に手間がかかります。
自分たちで作るか、外に頼むかの目安は「AIで業務自動化を自分で作る前に」、頼むときの費用の分け方は「AI導入の費用はいくら?」で詳しく書いています。
社内の資料を探す時間を減らすなら
白書の調査で「社内ヘルプデスク」が約5割使われていたように、社内の規程やマニュアルを探して答える業務は、回数が多く、材料も文字で手元にあることが多いため、4つの問いでも点が高くなりやすい業務です。一方で、材料の整え方と、答えられなかった質問への手当てが、効き目を左右します。作り方は「社内資料で答えるAIの作り方」にまとめています。
デイワンの相棒AIは、社内の資料だけを材料にして答える、自社だけのオリジナルAIです。回答の生成には Anthropic の Claude、資料を探すための埋め込みには OpenAI のモデルを使い、答えには根拠にした資料を引用で示します。何が聞かれ、どの質問に答えられなかったかを管理者が見られるので、足りない資料を足していく流れを回しやすくしています。
まとめ|最初の1つを選び、見直してからAIに任せる
業務改善は仕事のやり方全体を良くすること、業務効率化はその中で時間と手間を減らすことです。AIで業務効率化を進めるときは、ツールを先に選ぶのではなく、どの業務から始めるかを先に決めます。
- 回数・やり方の決まり・間違えたときの重さ・材料の4つの問いで、最初の1つを選ぶ
- AIにする前に、やめる・まとめるができないかを確かめる
- 今の時間を測ってから、少人数で2〜4週間試す
- 業務を丸ごとではなく、手順ごとに任せて、人が確かめる所を残す
AIの導入を進める前に何を確かめておけばよいかは、AI導入の前に確かめるチェックシートにまとめています。どの業務からAIにするかの見極めや、選んだ業務の仕組みづくりを相談したい場合も、お気軽にご相談ください。
あわせて読みたい:DX推進とは?、Claudeの使い方
よくある質問
- 業務改善と業務効率化の違いは何ですか?
- 業務改善は、仕事のやり方を見直してムリ・ムダ・ムラを減らし、品質・時間・費用のどれかを良くすることです。業務効率化はその中でも、同じ成果をより少ない時間や手間で出すことに絞った言い方で、業務改善の一部と考えると分かりやすくなります。
- AIで業務効率化するとき、どの業務から始めればよいですか?
- 回数が多い、やり方がある程度決まっている、間違えても人が気づいて直せる、材料が文字で手元にある、の4つに当てはまる業務から始めると進めやすくなります。議事録やメールの下書きは当てはまりやすい業務の一つです。
- 生成AIは企業のどんな業務で使われていますか?
- 総務省の令和8年版情報通信白書では、日本で利用の割合が高いのは「議事録・メール作成補助」(約7割)、「営業・販売」(約6割)、「社内ヘルプデスク」(約5割)でした。効果の実感も「議事録・メール作成補助」が約7割と高い結果でした。
- AIを入れる前にやっておくことはありますか?
- 選んだ業務を、やめられないか、まとめられないかの順に見直します。要らない書類や重複した記入が残ったままAIにすると、要らない業務を速くする仕組みに費用をかけてしまうことがあります。あわせて、今の作業時間を数件でも測っておくと、効き目を説明できます。
- AIで効率化しても、全部をAIに任せてよいですか?
- 業務を丸ごと任せるのではなく、下書き・要約・探す・書き写すといった手順ごとに任せ、人が確かめる所を残すのが安全です。金額の突き合わせや最終判断のように間違いの影響が大きい所は、AIが候補を挙げて人が決める形にします。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






