システム開発の納期遅れ・頓挫で困ったら|解約を決める前に確かめる3つのことと、途中から引き継ぐ進め方

システム開発の納期遅れ・頓挫で困っている発注者向けに、解約を決める前に確かめる3つのこと、途中解約したときの民法の考え方(請負・準委任)、別の会社が途中から引き継いで再開する進め方を解説します。
目次
1.システム開発の納期遅れ・頓挫は、どんな状態から始まるか
1-1.遅れが「頓挫」に変わるサイン
2.解約を決める前に確かめる3つのこと
2-1.できている物が、手元にあるか
2-2.残りの作業が見通せるか
2-3.どこで止まっているか
3.途中で解約するとどうなるか(民法の考え方)
3-1.請負の場合
3-2.準委任の場合
3-3.相手が約束を果たさないときの解除
4.続ける・やめる・引き継ぐの決め方
4-1.前の会社に頼んでおくこと
5.別の会社が途中から引き継ぐ進め方
6.想定の例|受発注のシステムの開発が、テストの手前で止まった
7.システム開発の納期遅れ・頓挫のよくある質問
7-1.途中で解約したら、払ったお金は戻りますか?
7-2.どこまでできているのか分からない状態でも、引き継げますか?
7-3.ソースコードが手元に無いときはどうなりますか?
7-4.開発会社を替えると、また同じように遅れませんか?
7-5.今の開発会社に、遅れの理由をどう聞けばいいですか?
8.まとめ|解約を決める前に、どこまでできているかを事実で確かめる
9.FAQ 案(microCMS の FAQ の欄に入れる)
納期が何度も延びる、完成の時期を聞いてもはっきりした答えが返ってこない、開発会社から返事は来るのに作業が進んでいるように見えない。業務のシステムやアプリの開発をこうした状態で抱えていると、このまま待つべきか、解約して別の会社に頼むべきかを決められないまま、時間だけが過ぎていきます。
しかも、すでに払ったお金や、社内で使う予定を組んだ業務があるので、簡単には止められません。解約したら払った分が無駄になるのか、追加で払わなければならないのか、途中まで作ったものは使えるのか、といったことが分からないのも、決められない理由になっています。
解約するかどうかを決める前に、まず「どこまでできているか」「残りは何か」「なぜ止まったか」の3つを事実で確かめてください。続けるにしても、やめて別の会社に引き継ぐにしても、この3つが分からなければ正しく決められません。また、途中でやめたときの扱いは契約の型(請負か準委任か)で変わるので、解約を考える段になったら、契約書を持って弁護士に相談するのが確実です。
システム開発の納期遅れ・頓挫は、どんな状態から始まるか
ひと口に「開発が遅れている」といっても、状態はいくつかに分かれます。どれに当てはまるかで、次に確かめることも少しずつ変わります。

状態 | よくある様子 |
納期に間に合わない | 遅れが重なり、リリースの日が見えない |
完成が見えない | 残りの作業がどれだけあるか、誰も答えられない |
途中で止まった | 開発が頓挫し、作業が進んでいない |
頼んだものと違う | 納品されたものが、決めた仕様と合わない |
4つは別々に起きるとは限らず、「頼んだものと違う」の直しが続いて納期に間に合わなくなり、そのまま止まってしまう、というように重なって進むこともあります。
遅れが「頓挫」に変わるサイン
遅れそのものは、どの開発でもある程度は起こり得ます。気をつけたいのは、遅れの理由や残りの見通しを聞いても具体的な答えが返ってこない状態が続くことで、予定の出し直しが何度も繰り返される、残りの作業を一覧で出してもらえない、担当者が替わって話が最初からやり直しになる、といったことが重なると、開発が止まりかけている可能性があります。
こうしたサインが出たら、相手を責める前に、次の章の3つを確かめ始めるのがおすすめです。確かめた事実は、相手と話し合うときにも、別の会社や弁護士に相談するときにも、そのまま使えます。
解約を決める前に確かめる3つのこと
当社が止まった開発を途中から引き受けるときも、最初に確かめるのはこの3つです。どこで止まっているのかを確かめてから、再開の進め方を組み直します。

できている物が、手元にあるか
最初に、これまでに作られた物が自社の手元にあるか、少なくとも自社から見られる所にあるかを確かめます。見るのは、ソースコード(どこに置かれていて、自社のアカウントで見られるか)、設計書や画面の資料、打合せの記録、テスト用や本番用の環境(クラウドなどの管理画面に自社が入れるか)です。
ソースコードや環境が相手の手元にしか無い場合、解約したあとに受け取れるかどうかで、その先にできることが大きく変わります。契約書で、途中までの成果物の扱いや、ソースコードの権利がどう決められているかもあわせて見ておいてください。ほかの会社が作ったシステムを引き継ぐときに手元にそろえる物は、「他社が作ったシステムの引き継ぎ|作った人がいない・保守を断られたときの進め方」で詳しく書いています。
残りの作業が見通せるか
次に、できている所と残っている所を分けます。開発会社に作業の一覧(どの機能がどこまでできているか)を出してもらえれば一番早いのですが、一覧が無い、出してもらえない、という場合でも、コードと資料を読めば、どの画面や処理ができていて、どこが手付かずかはかなりの所まで洗い出せます。
ここで大事なのは、「ほぼできています」「あと少しです」といった言葉ではなく、機能ごとに「できている」「途中」「手付かず」を並べた形で見ることです。そうすると、残りの量が、続けるにもやめるにも判断の材料になります。
どこで止まっているか
最後に、止まった原因を確かめます。原因は大きく分けると、仕様の決まり方(決めることが決まらない、決めたことが何度も変わる)、作業の進め方(人が足りない、管理が回っていない)、コードの出来(作ったものに不具合が多く、直しに追われている)の3つです。
原因が発注する側に残っていることもあります。たとえば、社内で仕様が決まらないまま開発会社に任せていた場合は、会社を替えても同じところで止まりやすいので、原因を確かめるときは自社の側も含めて見ることをおすすめします。
途中で解約するとどうなるか(民法の考え方)
解約を考える段になって気になるのが、払ったお金や途中までの作業の扱いです。ここでは、契約書に特別な決まりが無いときに民法がどう定めているかを、条文の文言に沿って紹介します。実際の扱いは契約書の中身と事情で変わるので、自社の場合にどうなるかは、契約書を持って弁護士に相談してください。

システム開発の契約は、大きく分けると「請負」と「準委任」のどちらか、または工程ごとに組み合わせた形で結ばれることが多いです。契約書の題や条文に「請負」「準委任」「業務委託」などと書かれているので、まずそれを確かめます。
請負 | 準委任 | |
約束すること | 仕事を完成すること | 事務(作業)を行うこと |
発注者からやめるとき | 完成しない間は、いつでも損害を賠償して解除できる | 各当事者がいつでも解除できる(不利な時期などは損害の賠償) |
途中までの報酬 | 可分な部分で発注者が利益を受けるときは、その割合に応じて | すでにした履行の割合に応じて |
請負の場合
民法は、請負を「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」契約と定めています(第632条)。そのうえで、「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる」としています(第641条)。つまり、発注する側は完成の前ならやめられますが、やめたことで相手に生じた損害を賠償する前提になっています。
また、仕事の完成前に解除されたときは、すでにできた部分のうち分けられる部分で注文者が利益を受けるなら、その部分を完成とみなし、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できる、とも定めています(第634条)。途中までの成果物が使えるかどうかが、払う額にも関わってくるということです。
準委任の場合
作業を行うこと自体を約束する契約は、準委任と呼ばれ、委任の決まりが準用されます(第656条)。委任は「各当事者がいつでもその解除をすることができる」とされ(第651条1項)、相手に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由があった場合を除いて、相手の損害を賠償しなければならないとされています(同条2項)。
報酬については、委任が途中で終わったときは、受任者は「既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる」とされています(第648条3項)。月ごとの作業の量で払う形の契約では、この考え方になることが多いでしょう。
相手が約束を果たさないときの解除
ここまでは、発注する側の都合でやめる場合の決まりです。これとは別に、相手が約束どおりに仕事をしない場合の解除の決まりもあります。民法は、相手が債務を履行しないときに「相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないとき」は契約を解除できるとし(第541条)、決まった時期に履行されなければ契約の目的を達せられない場合にその時期を過ぎたときなどは、催告をせずに解除できるとしています(第542条)。
ただし、遅れがどちらの責任か、納期が「その時期を過ぎたら目的を達せられない」ものに当たるか、といった点は事情によって判断が分かれます。遅れの経緯(いつ・何を決めて・いつ何が遅れたか)をメールや議事録で時系列に並べておくと、弁護士に相談するときの材料になります。
続ける・やめる・引き継ぐの決め方
3つの確かめと契約の確認ができたら、続けるか、やめるか、別の会社に引き継ぐかを決めます。どれを選ぶにしても、決める材料は前の章までに確かめた事実です。
選ぶ道 | 向いている場面 | 決める前に確かめること |
今の会社と続ける | 原因が分かり、相手も直す手立てを示せる | 残りの作業の一覧と、出し直した予定の根拠 |
別の会社に引き継ぐ | 相手に直す手立てが無い、関係が続けられない | 途中までの成果物を受け取れるか、契約上の扱い |
いったん止める | 目的や仕様から見直す必要がある | 止めている間の費用と、使っている業務への影響 |
続けるか替えるかで迷うときは、残りの作業の一覧と止まった原因を、今の会社とは別の立場の人に見てもらうのも一つの手です。外から見た意見があると、社内で決めるときの話も進めやすくなります。
前の会社に頼んでおくこと
別の会社に引き継ぐと決めたら、関係がこじれる前に、引き継ぎに要る物を渡してもらうよう頼んでおきます。
渡してもらう物 | 引き継ぐ側で何に使うか |
ソースコード一式(置き場所への権限を含む) | できている所と残りを洗い出す |
設計書・画面の資料・作業の一覧 | 仕様と進み具合を確かめる |
環境(クラウド・サーバー)の管理権限 | 動かして確かめる・移す |
打合せの記録・決めたことの一覧 | 仕様がどこまで決まっていたかを知る |
渡してもらう物の範囲や費用で話がまとまらないときは、無理に押し切らず、弁護士に相談してから進めてください。相手と連絡が取れなくなってしまった場合の動き方は、「開発会社・制作会社と連絡が取れないときに最初の1週間でやること」に書いています。
別の会社が途中から引き継ぐ進め方
途中で止まった開発を別の会社が引き継ぐときは、いきなり作業の続きを始めるのではなく、まず遅れの現状を調べてから、残りの作業と進め方を組み直します。当社では、次の4つの段で進めています。

最初のご相談では、いまの遅れの状況をうかがい、いただいた資料と公開されている情報から、お引き受けできるかどうかをご回答します。そのあとの調査では、コードと資料をAIで読み解き、できている所と残りの作業、止まった原因を、事実・推測・まだ確かめていないことに分けてご報告し、再開までの進め方をいくつか比べて選べるようにお示しします。調査だけで終えていただいても構いません。
相談の窓口は、エンジニアでもある代表です。持ち帰りや伝言を挟まないので、技術の面からの見通しをその場でお話しでき、話の食い違いも起きにくくなります。なお、前の会社との間で権利や支払いの話し合いが続いている場合、その部分は弁護士の領分なので、当社は技術の面に絞ってお手伝いします。
AIで作った試作やPoC(小さく試す段)で止まっている場合は、「PoC止まりのAIを立て直すには」もあわせてご覧ください。
想定の例|受発注のシステムの開発が、テストの手前で止まった
ここからは想定の例です。実際の案件ではありません。
社内の受発注を管理するシステムの開発を請負で頼み、半年ほどで完成する予定だったのが、予定の出し直しが3回続き、テストに入る手前で作業が進まなくなった、という場面を考えてみます。開発会社からは「あと少し」という返事が続きますが、残りの作業の一覧は出てきません。
この場合、まずソースコードの置き場所に自社のアカウントで入れるかを確かめ、入れるなら、コードと資料から画面と処理ごとにできている所と残りを洗い出します。あわせて、打合せの記録を見返して、仕様が最後まで決まらなかった所が無いかを確かめると、止まった原因が相手の進め方にあるのか、決めごとの側にあるのかが見えてきます。そのうえで、続けるか引き継ぐかを決め、引き継ぐなら途中までの成果物と報酬の扱いを契約書と照らして弁護士に相談する、という順番になります。
システム開発の納期遅れ・頓挫のよくある質問
途中で解約したら、払ったお金は戻りますか?
契約の型と中身、どちらの責任で遅れたかによって変わります。請負なら、途中までの成果物のうち分けられる部分で利益を受ける場合は、その割合に応じて報酬を払うという決まりが民法にあります。自社の場合にどうなるかは、契約書を持って弁護士に相談してください。
どこまでできているのか分からない状態でも、引き継げますか?
残っているコードと資料から、できている所と残っている所を確かめられます。分かったことと分からないことを分けてご報告するので、まずはその状態のままご相談ください。
ソースコードが手元に無いときはどうなりますか?
途中までの物を引き継ぐには、ソースコードが要ります。前の会社から受け取れるかを先に確かめてください。受け取れない場合は、できることがかなり限られます。
開発会社を替えると、また同じように遅れませんか?
止まった原因が分からないまま替えると、同じ所で止まることがあります。とくに仕様が決まらないことが原因なら、会社を替えても解決しないので、替える前に原因を確かめることをおすすめします。
今の開発会社に、遅れの理由をどう聞けばいいですか?
「あとどれくらいか」ではなく、機能ごとに「できている・途中・手付かず」を並べた一覧と、遅れた理由を書面で出してもらうよう頼むのがおすすめです。答えの形が決まっていると、事実で話せます。
まとめ|解約を決める前に、どこまでできているかを事実で確かめる
システム開発が遅れたり止まったりしても、すぐに解約か継続かを決める必要はありません。まずは事実を確かめ、そのうえで続ける・やめる・引き継ぐを選ぶと、払ったお金や途中までの作業を無駄にしにくくなります。
- できている物(ソースコード・資料・環境)が手元にあるかを確かめる
- 残りの作業を、機能ごとに「できている・途中・手付かず」で並べる
- 止まった原因を、相手の側と自社の側の両方から確かめる
- 途中でやめたときの扱いは契約の型(請負・準委任)で変わる。判断は契約書を持って弁護士に相談する
デイワンでは、納期に間に合わない、途中で止まってしまった、というシステム開発を途中から引き受け、遅れの原因と残りの作業を確かめて、再開の道筋を立てるご相談をお受けしています。お引き受けできるかどうかのご回答までは無料ですので、どこまでできているか分からない状態でも、お気軽にご相談ください。
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FAQ 案(microCMS の FAQ の欄に入れる)
1. Q: システム開発の納期遅れ・頓挫で、最初に何をすればいいですか?
A: 解約を決める前に、できている物が手元にあるか、残りの作業は何か、なぜ止まったかの3つを事実で確かめます。続けるにもやめるにも、この3つが判断の材料になります。
2. Q: システム開発を途中で解約できますか?
A: 民法では、請負なら完成しない間は注文者がいつでも損害を賠償して解除でき、準委任なら各当事者がいつでも解除できると定めています。実際の扱いは契約書の中身で変わるので、弁護士に相談してください。
3. Q: 途中で解約したら、途中までの費用は払う必要がありますか?
A: 請負では、分けられる部分で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を払うという決まりがあります。準委任では、すでにした作業の割合に応じた報酬になります。自社の場合は弁護士に確かめてください。
4. Q: 止まった開発を、別の会社に途中から引き継いでもらえますか?
A: ソースコードと資料があれば、できている所と残りの作業、止まった原因を調べたうえで、進め方を組み直して再開できます。まずは引き受けられるかどうかの相談から始めます。
5. Q: どこまでできているか分からない状態でも相談できますか?
A: できます。残っているコードと資料から、できている所と残っている所を確かめ、分かったことと分からないことを分けて報告します。
よくある質問
- システム開発の納期遅れ・頓挫で、最初に何をすればいいですか?
- 解約を決める前に、できている物が手元にあるか、残りの作業は何か、なぜ止まったかの3つを事実で確かめます。続けるにもやめるにも、この3つが判断の材料になります。
- システム開発を途中で解約できますか?
- 民法では、請負なら完成しない間は注文者がいつでも損害を賠償して解除でき、準委任なら各当事者がいつでも解除できると定めています。実際の扱いは契約書の中身で変わるので、弁護士に相談してください。
- 途中で解約したら、途中までの費用は払う必要がありますか?
- 請負では、分けられる部分で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を払うという決まりがあります。準委任では、すでにした作業の割合に応じた報酬になります。自社の場合は弁護士に確かめてください。
- 止まった開発を、別の会社に途中から引き継いでもらえますか?
- ソースコードと資料があれば、できている所と残りの作業、止まった原因を調べたうえで、進め方を組み直して再開できます。まずは引き受けられるかどうかの相談から始めます。
- どこまでできているか分からない状態でも相談できますか?
- できます。残っているコードと資料から、できている所と残っている所を確かめ、分かったことと分からないことを分けて報告します。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






