AIエージェント開発の進め方|チャットとの違い、任せられる業務と作る5つの手順

AIエージェントの開発と導入を考える企業の担当者向けに、チャットとの違い、任せられる業務とまだ任せにくい業務、作る5つの手順、権限・誤動作・費用・監視の気をつける点を、当社が自社の業務でAIの道具を回している経験から解説します。
目次
ChatGPT や Claude に質問して答えをもらう使い方は、多くの職場に広がってきました。次に出てくるのが、答えをもらうだけでなく、調べる・まとめる・登録するといった作業そのものをAIに進めてほしい、という声で、これを担うのがAIエージェントです。
ただ、作業を任せるということは、AIが社内のシステムやデータに触れるということでもあります。どの業務なら任せてよいのか、間違えたときにどう止めるのか、何から作り始めればよいのかが分からず、検討の段階で止まっている担当者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、当社が自社の業務でAIに作業を任せる道具を作り、毎日回している経験をもとに、AIエージェントの開発の進め方を整理します。
AIエージェントは、何をしてよいかを先に決め、人が確かめる所を残し、小さく試してから広げると、業務で回せる形になります。反対に、権限を広く渡したまま一度に多くを任せると、誤動作したときの影響が大きくなります。
AIエージェントとは|チャットとの違い
チャット型のAIは、聞かれたことに文章で答えるところまでが役目で、その答えを使って作業をするのは人です。AIエージェントは、目的と手順を渡されると、検索やファイルの読み書き、ほかのサービスへの登録といった道具を自分で選んで使い、作業を順に進めていきます。
たとえば「先月の問い合わせを分類して、表にまとめて共有フォルダに置く」という仕事なら、チャットでは分類の案をもらったあと、表を作って置くのは人の手になります。AIエージェントであれば、問い合わせを読み、分類し、表を作って置くところまでを1つの流れとして任せられます。

チャット型のAI | AIエージェント | |
役目 | 質問に答える | 目的に沿って作業を進める |
使うもの | 会話の中の情報 | 検索・ファイル・社内システムなどの道具 |
作業をする人 | 人 | AI(人は確かめる) |
間違えたときの影響 | 答えが違う | データや外部のサービスが書き換わることがある |
表の最後の行が、AIエージェントを作るときに一番考えるべき所です。答えが違うだけなら人が読んで気づけますが、作業が進んでしまうと、気づいたときにはもう書き込まれている、ということが起こりえます。
AIエージェントに任せられる業務と、まだ任せにくい業務
任せやすいのは、手順がある程度決まっていて、途中で間違えてもやり直せる業務です。逆に、お金が動く操作や、取り消せない操作、その場の事情を踏まえた判断が要る業務は、AIに最後まで任せるより、人が確かめてから実行する形にしておくほうが安全です。
任せやすい業務 | まだ任せにくい業務 |
資料や記録を集めて要約する | 支払い・広告費など、お金が動く操作 |
決まった形の下書きを作って置く | 削除など、取り消せない操作 |
決まった時刻に決まった投稿や通知をする | 顧客への返答など、相手との関係に関わる判断 |
決まった項目を読み取って表に書き写す | 例外が多く、手順に書ききれない業務 |
当社では、記事の告知をSNSに毎朝9時に1本ずつ投稿する作業をAIで作った仕組みに任せています。投稿する文はあらかじめ人が確かめて並べてあり、決めた本数を出し終えると仕組みが自分で止まるようにしました。一方で、広告の配信を始めるようなお金の動く操作は、AIが準備まで進めても、実行は人の許可を得てから行っています。
AIエージェント開発の進め方(5つの手順)
当社が自社の道具を作ってきた流れを、5つの手順にまとめます。

1. 業務を切り出す
最初に、任せたい業務を「何を読んで、何をして、どこに書くか」の単位まで小さく切り出します。「広報を任せたい」のような大きな単位のままでは、AIがどこまでしてよいのかを決められません。「告知文を1日1本、決まった時刻に投稿する」くらいまで細かくすると、道具と権限、確かめる所が決めやすくなります。
2. 道具と権限を決める
切り出した業務に要る道具だけを渡し、権限もその作業に要る範囲に絞ります。読むだけで済む作業には読み取りの権限だけを渡し、書き込みが要る場合も、書いてよい場所を決めておきます。
当社の道具は、外のサービスに書き込む処理を、指定を付けたときだけ動くように作っています。指定を付けずに動かすと、何をどこに書くかを確かめるだけで終わり、実際には何も書き込みません。
3. 人が確かめる所を決める
AIが作業を進める流れの中に、人が確かめてから先へ進む所を置きます。すべての段階で止めると任せる意味が薄れるので、取り消せない操作の前と、外に出る前に絞るのが現実的です。当社で作った図の画像を記事に使うときは、図の中の文字が本文と一字も違わないかを毎回確かめてから使っています。
4. 小さく試す
いきなり本番の全件を任せず、確かめだけ、1件、少数、と段階を踏みます。当社で広告文を入れ替えたときは、まず確かめだけを15件通し、承認を得てから本番に入れました。
5. 広げる
小さく試して問題がなければ、件数や業務の範囲を広げます。広げるときも、仕組みの中の止める条件を変えるだけで済むように作っておくと扱いやすくなります。当社のSNSの自動投稿は、記事が2本増えたときに、止める本数を6本から8本に直すだけで伸ばせました。
AIエージェントを導入するときに気をつける4つの点

権限|必要な範囲だけを渡す
AIエージェントには、作業に要る権限だけを渡します。管理者の権限を丸ごと渡すと、想定していない操作まで実行できてしまうためです。当社の作業環境では、お金の動く操作をAIが実行しようとしたときに安全の仕組みが止め、人が許可してから行う形になっています。
誤動作|試作では起きないことが本番で起きる
AIエージェントは、つなぐ先のサービスの仕様に左右されます。当社では、サイトの管理の仕組みに道具から保存し直したところ、記事に埋め込んでいたカードが8つ消えたことがありました。また、管理画面の項目を整理したあと、道具が無くなった項目を送り続けて止まったこともあります。どちらも試作の段階では起きず、実際に使って初めて分かったことでした。書き込む前に控えを取っておき、戻せる状態にしてから動かすことが欠かせません。
費用|回すほどかかる費用を見ておく
AIエージェントは、作る費用のほかに、AIを呼び出すたびの利用料や、つなぐ先のサービスの利用料がかかります。投稿のように1件ごとに料金がかかるサービスもあるので、件数が増えたときの費用をあらかじめ見積もっておきます。費用の内訳と見積もりの比べ方は「AI導入の費用はいくら?相場と内訳、見積もりが膨らみやすい3つの所」にまとめています。
監視|何をしたかを後から追えるようにする
任せたあとも、AIが何をしたかを記録に残し、後から追えるようにします。当社のSNSの自動投稿は、投稿のたびに記録を書き、次に出す番号をファイルで持っているので、どこまで出たかをいつでも確かめられます。止まったときや、おかしな動きをしたときに、どこで何が起きたかをたどれるかどうかが、運用を続けられるかの分かれ目になります。
社内の資料や顧客の情報をAIに読ませる場合は、情報の扱いも決めておく必要があります。考え方は「生成AIに機密情報を学習させない方法」で書いています。
自社で作るか、導入支援を頼むか
1つの業務を小さく任せるところまでは、AIを使えば社内でも作れます。どこまでを自分で作り、どこから頼むかの目安は「AIで業務自動化を自分で作る前に|自作で足りる範囲と、プロに頼む3つの目安」で整理しました。
ほかのシステムへの書き込みや、お金・顧客に関わる操作が入る場合、作った人のほかに直せる人がいない場合は、設計と確かめ方を外の目で見てもらうと、本番で止まる危険を減らせます。社内資料をもとに答えるAIから始めたい場合は「社内資料で答えるAIの作り方」、試したまま止まっているAIがある場合は「PoC止まりのAIを立て直すには」も参考にしてください。
まとめ|何をしてよいかを決めて、小さく任せる
AIエージェントは、答えるだけのチャットと違い、道具を使って作業を進めるぶん、任せる範囲と止め方を先に決めておくことが大切です。業務を小さく切り出し、要る道具と権限だけを渡し、人が確かめる所を残したうえで、小さく試してから広げていくと、業務で回せる形になります。
- 任せやすいのは、手順が決まっていて、間違えてもやり直せる業務
- お金が動く操作・取り消せない操作は、人が確かめてから実行する
- 作る流れは、切り出す→道具と権限→人が確かめる所→小さく試す→広げる
- 権限・誤動作・費用・監視の4つを、作る前に決めておく
デイワンでは、AIに任せる業務の切り出しから、AIエージェントの設計と開発、回し始めてからの見直しまでお受けしています。どの業務から任せればよいか分からないという段階でも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
- AIエージェントとチャットボットは何が違いますか?
- チャットボットは質問に答えるところまでで、作業は人が行います。AIエージェントは、検索やファイルの読み書き、ほかのサービスへの登録といった道具を使い、作業そのものを進めます。
- どんな業務からAIエージェントを導入すればよいですか?
- 手順がある程度決まっていて、間違えてもやり直せる業務から始めるのがおすすめです。資料の要約や、決まった形の下書き、決まった時刻の投稿などが向いています。
- AIエージェントにお金が動く操作を任せても大丈夫ですか?
- 準備まではAIに任せ、実行は人が確かめてから行う形をおすすめします。取り消せない操作も同じです。
- AIエージェントの開発費用はどのくらいかかりますか?
- 作る費用のほかに、AIの利用料やつなぐ先のサービスの利用料がかかります。内訳は「AI導入の費用」の記事で解説しています。
次に読む記事

ローカルLLMの導入ガイド|社内に置くAIが向く場面と、必要な機械・運用・進め方
記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






