AIでデータ分析を始める前に|社内データでできること・できないことと進め方

AIで社内データを分析・活用したい担当者向けに、AIでできる分析とできないこと、データの整え方、進める5つの段階、気をつける点を解説します。分析の前に数字を疑う工程も、当社の例でまとめました。
売上、日報、問い合わせの記録、アンケートの回答など、社内にデータはたまっているのに、月末に表を作って会議で眺めて終わっている会社は珍しくありません。データを活かせと言われても、どこから手を付ければよいか分からず、担当者が手作業の集計に追われているうちに次の月が来てしまいます。
生成AIを使えば、集計やグラフ化はかなり速くなります。ただ、表が速くできるようになっただけでは、会社の判断は変わりません。この記事では、AIでできる分析とできないこと、分析の前のデータの整え方、進める流れ、気をつける点を、当社が自社のデータを実際に読んできた経験もまじえて整理します。
AIは集計や比較、目立つ変化を見つけるのが得意ですが、問いを立てることと、数字そのものが正しいかを確かめることは人の仕事として残ります。1つの問いに絞り、数字を疑ってから分析し、結果を次の行動に結びつけるまでを1回通すことから始めると、無理なく進められます。
AIデータ分析とは
ここで言うAIデータ分析は、社内のデータをAIに渡し、言葉で問いかけて集計・比較・説明を返してもらう使い方を指します。これまでは関数やピボットテーブル、専用の分析ツールを使いこなせる人に頼っていた作業を、「先月と比べて落ちた商品はどれか」「問い合わせが増えた理由として考えられるものは何か」と普通の言葉で聞けるようになった点が、一番の違いです。
もう1つの違いは、数字だけでなく文章のデータも扱えることです。日報の所感、問い合わせの本文、アンケートの自由記述のように、これまで読む人の感覚に任されていたデータも、AIに分類させたり、よく出てくる話題をまとめさせたりできます。
AIでできる分析、できないこと
AIに任せやすいのは、手間はかかるが答えの確かめ方がはっきりしている作業です。どこまでを任せ、どこを人が持つかを先に分けておくと、AIの答えに振り回されにくくなります。

AIに任せやすいこと | 人が持つこと |
部署や月ごとの集計、前年や前月との比較 | 何を知りたいのか、問いを立てる |
いつもと違う動き(急な増減)を見つける | 元のデータが正しく取れているかを確かめる |
日報や問い合わせの文章を分類し、話題をまとめる | AIが挙げた理由が本当かを、現場の事実で確かめる |
表やグラフ、説明文の下書きを作る | 結果を受けて何をするかを決め、責任を持つ |
注意したいのは、AIは渡されたデータが間違っていても、それらしい説明を付けて返してくることです。また、「Aが増えた月はBも増えている」という並びは見つけられても、AがBの原因かどうかは、データだけでは決めきれません。理由の候補を出させるのは役に立ちますが、それを確かめる作業は人の側に残ります。
分析の前に、データを整える
AIで分析を始める前に、時間をかけたいのがデータを整える作業です。部署ごとに別の Excel で管理していて同じ顧客の名前の書き方がばらばら、途中で項目が増えたり減ったりしている、空欄が多い、といった状態のまま渡すと、AIはそのまま集計して、もっともらしい結論を返してしまいます。
もう1つ見落としやすいのが、データが途中から取れていないことです。当社でも、自社のオウンドメディアの成績をまとめた表を読み直したとき、ある月から先のページの閲覧数・資料ダウンロード・問い合わせがすべて0になっていました。数字だけを見れば「成果が出ていない」と読めますが、すべてが同時に0になるのは不自然で、成果ではなく計測そのものが止まっている可能性があると考え、その前提で扱うことにしました。こうした見落としは、分析の手法ではなく、数字を疑う手順を入れておくことで防げます。
- 必要な期間のデータが、途中で途切れずにそろっているか
- 同じものの書き方(社名・商品名・部署名)がそろっているか
- 途中で項目の意味や集め方が変わっていないか
- 0や空欄が、本当の0なのか、取れていないだけなのか
データを完璧にそろえてから始める必要はありません。最初の問いに必要な分だけを整え、分析してみて足りない所が見えたら、そこを足していく順の方が、止まらずに進められます。
社内データをAIで分析する進め方
当社は、会社の方針として「データから問題を見つけ、何をすべきかまで答える」ことを掲げています。社内データの分析も、この順に沿って次の5つの段階で進めると、表を作って終わることを避けやすくなります。

1つ目は、問いを1つに絞ることです。「データを活用したい」では広すぎるので、「問い合わせから受注までの割合が落ちているのはどの経路か」のように、答えが出たら次の行動が変わる問いにします。2つ目に、その問いに必要なデータだけを集め、3つ目に、前の章で挙げた点で数字を疑います。
4つ目でAIに分析させるときは、集計の結果だけでなく、どう計算したかも出させると、人が確かめやすくなります。当社が自社の記事のキーワードを組み直したときも、候補の語の月間の検索数をキーワードの調べ道具で取り、業種を付けた語や長い言い回しはほとんど検索されず、悩みを表す短い語の方が大きい、という結果を見てから方針を決めました。思い込みで決めかけていた切り口を、数字で確かめてから選び直せたのが、分析の一番の効き目でした。
結果を「何をすべきか」まで落とす
5つ目の、結果を行動に変える段階が抜けると、分析は報告書で終わります。分かったことごとに「誰が、何を、いつまでに変えるか」を1行で決め、次に同じデータを見たときに、変えた結果が数字に出ているかを確かめるところまでを1回の分析と考えます。
当社の相棒AIには、社内の資料から答える機能を土台に、オプションとして推論の機能を載せることができます。グラフデータベースと、システムダイナミクスやゲーム理論、意思決定理論などの8つの理論を使い、データの中の原因と結果のつながりを推し量って、打てる手の候補を示すものです。標準の機能ではなく、案件に応じて足す拡張で、示された候補を採るかどうかは、ほかの分析と同じく人が決めます。
気をつけること
社内データの分析をAIで進めるときに、特に気をつけたい点を3つにまとめます。
気をつけること | 中身 |
外に出せないデータの扱い | 顧客情報や社外秘の数字を、設定を確かめないまま外部のAIサービスに入れない。社内のサーバーで動くAI(ローカルLLM)で作る方法もある |
答えの確かめ方 | AIが出した数字は、少なくとも一部を元のデータで計算し直す。理由の説明は候補として扱う |
続けて見る仕組み | 1回の分析で終わらせず、同じ問いを月ごとなどで見直せる形にする |
外に出せないデータの扱いは、生成AIに機密情報を学習させない方法と、社内に置いて使うAI(ローカルLLM)の記事で詳しく書いています。
続けて見る仕組みでは、データを集め始める前に、ちゃんと取れていることを確かめるのが大切です。当社がサイトの中でどのリンクが押されているかを測る仕組みを足したときも、本番のページで実際に1回押し、アクセス解析に届いたことを確かめてから集め始めました。取り始めの確認を飛ばすと、数週間後に見たときに、前の章の例のように数字が取れていなかったと分かることになります。

自分でやるか、頼むか
1つの問いを1回分析してみるところまでは、手元の Excel と生成AIで、担当者が自分で試せます。試してみると、どのデータが足りないか、どの問いなら判断が変わるかが見えてくるので、まずは小さく1回通してみるのがおすすめです。
一方で、複数のシステムからデータを毎月自動で集めてつなぐ、外に出せないデータを社内の環境で分析する、分析の結果を経営の会議で毎月見られる形にする、といった段階になると、仕組みとして作り込み、直し続ける人が必要になります。自分で作る範囲と頼む範囲の線の引き方は、AIで業務自動化を自分で作る前にで、費用の考え方はAI導入の費用の記事でまとめています。
まとめ
社内データをAIで分析するときは、AIに任せやすいことと人が持つことを分け、データを整えて数字を疑ってから分析し、結果を次の行動に結びつけるまでを1回通すことが出発点になります。
- AIは集計・比較・変化の発見・文章の分類が得意で、問いを立てることと数字の正しさの確認は人が持つ
- 分析の前に、データの途切れ・書き方のばらつき・0や空欄の意味を確かめる
- 問いを1つに絞り、問い・集める・疑う・分析・行動の5つの段階で進める
- 外に出せないデータの扱いと、続けて見る仕組みを最初に決めておく
当社のAIソリューション開発では、社内にたまったデータをAIで整理して分析し、判断に使える形で見られるようにするところまでを、ご一緒に作ります。どの問いから始めるかの段階からご相談いただけます。
よくある質問
- AIでデータ分析をするには、データを完璧に整えてからでないといけませんか。
- いいえ。最初の問いに必要な分だけを整えて一度分析し、足りない所が見えたらそこを足していく順の方が、止まらずに進められます。
- 生成AIが出した分析結果は、そのまま信じてよいですか。
- 一部を元のデータで計算し直して確かめることをおすすめします。元のデータが間違っていても、AIはそれらしい説明を付けて返すためです。
- 社内のデータを外に出さずにAIで分析できますか。
- できます。社内のサーバーで動くAI(ローカルLLM)で作る方法があり、扱うデータの範囲はご相談のときに一緒に決めます。
- 何から始めればよいですか。
- 「答えが出たら次の行動が変わる問い」を1つ決め、その問いに必要なデータだけを集めて1回分析してみることから始めます。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






