ECサイトの要件定義書の作り方|無料テンプレートやより良い制作方法を紹介します

ECサイトの要件定義書に入れる項目をテンプレートの形で公開します。立ち上げ前に決めておくこと、構築方式(ASP・パッケージ・フルスクラッチ)の選び方、要件定義書を作る流れ、クレジットカード・セキュリティガイドラインを踏まえた決済とセキュリティの要件、制作会社に渡すRFPとの違いまで解説します。
目次
1.【テンプレート】ECサイト構築に使える要件定義書とRFP
2.ECサイトの要件定義をする前に決めておくべきこと
2-1.ECサイトを立ち上げたい理由と目的
2-2.集客と販路のフロー
2-3.期日の目処
2-4.必要な要素・機能
3.ECサイトの構築方式の選び方
4.ECサイトの要件定義書を作成する流れ
4-1.サイトコンセプトの整理
4-2.ECサイト構築の背景や目的の明確化
4-3.構築後の運用フローの整理
4-4.必要な機能や要素の明確化
4-5.デザインの方向性の整理
4-6.公開予定日から逆算したスケジュール設定
5.決済とセキュリティの要件は早めに決める
6.制作会社に依頼するならRFPだけで十分
7.ECサイトの要件定義や構築を相談したいときは
8.まとめ|ECサイトの要件定義書テンプレートを使って要件を整理!
ECサイトを立ち上げたい、今のECサイトを作り直したいと考えたとき、最初につまずきやすいのが「何を決めてから制作会社に相談すればよいのか」という点です。要件が固まらないまま見積を取ると、会社ごとに前提が違う見積が並び、比べようがなくなってしまいます。
この記事では、ECサイトの要件定義書に入れる項目をテンプレートの形で示し、立ち上げ前に決めておくこと、構築方式の選び方、要件定義書を作る流れを順に解説します。決済とセキュリティの要件については、クレジットカード決済を扱う事業者向けのガイドラインの最新の版を踏まえて整理しました。
【テンプレート】ECサイト構築に使える要件定義書とRFP

ECサイトの構築やリニューアルを成功させるには、制作を頼む前に自社の要件を整理し、言葉にしておくことが欠かせません。下の表は、ECサイトの要件定義書に入れる項目を目次の形にまとめたテンプレートで、Excelやスプレッドシートにそのまま写せば使えます。
区分 | 項目 | 書く内容 |
目的 | 立ち上げの目的・背景 | なぜECを始めるのか、売上や顧客の数の目標 |
目的 | 売る相手と売り方 | 消費者向けか企業向けか、新しい顧客か今の顧客か |
商品 | 取り扱う商品 | 商品の数と種類、定期購入・予約販売・名入れなどの有無 |
集客 | 集客と販路 | 広告・SNS・検索・メール、ECモールとの併用 |
機能 | 買う人が使う機能 | 商品検索、カート、会員登録、マイページ、レビュー |
機能 | 運営側が使う機能 | 商品・在庫・受注・顧客・売上の管理 |
決済 | 決済の手段 | クレジットカード、コンビニ払い、後払い、銀行振込など |
連携 | 外部とのつなぎ | 基幹システム、在庫・物流、会計、ECモール |
運用 | 運用の体制 | 受注・出荷・問い合わせ・商品の更新を誰が担当するか |
非機能 | セキュリティと性能 | 脆弱性対策、不正ログイン対策、表示速度、セール時のアクセス |
条件 | 予算とスケジュール | 公開日、各工程の期間、初期費用と月々の費用の上限 |
方式 | 構築方式 | ASP・パッケージ・フルスクラッチのどれにするか(下で解説) |
最初からすべての欄を埋める必要はなく、決まっていない欄には「未定」「候補はAとB」と書いておけば十分です。未定の欄が見えていると、制作会社との打ち合わせで何を先に決めるべきかがはっきりします。
制作会社に提案と見積を頼むRFP(提案依頼書)については、書き方とテンプレートの例・記入例を資料「ホームページリニューアルのRFP入門」にまとめています。ホームページのリニューアル向けの資料ですが、RFPの構成と記入例はECサイトの発注を考えるときの手がかりになります。
ECサイトの要件定義をする前に決めておくべきこと

要件定義書を書き始める前に、社内で話し合って決めておきたい項目があります。ここがあいまいなまま制作会社に相談すると、打ち合わせのたびに前提が変わり、手戻りと費用が膨らみやすくなります。
ECサイトを立ち上げたい理由と目的
ECサイトを立ち上げる目的と背景をはっきりさせることが、要件定義の出発点です。「なぜECサイトが必要なのか」「誰に何を届けたいのか」を掘り下げていくと、ECサイトに求める機能やデザインの方向性が見えてきます。
目的が決まらないまま制作を進めると、次のような問題が起こりやすくなります。
- 途中で方向性がぶれる
- 使われない機能の実装に費用がかかる
- 公開しても売上や成果につながらない
たとえば「百貨店や実店舗への卸売に加え、全国の消費者へ直接商品を届けたい」という目的なら、消費者向けのECサイトが必要になり、買ってくれた人に再び来てもらうための会員機能やメール配信が大事な要件になります。目的は関係者全員で共有し、公開から1年後にどうなっていたいかというゴールまで決めておきましょう。
集客と販路のフロー
どこから人を集め、どの経路で売るかを先に決めておくことは、サイトの構造と機能を決めるうえで大切です。集客の経路によって、トップページから商品ページへの導線や、購入率(CVR)の測り方が変わるため、あとから決めるとサイトマップを作り直す手間が出ます。
集客方法 | 流れの例 |
広告 | Web広告から商品ページや特集ページへ直接誘導する |
SNS | InstagramやXの投稿からECサイトへ誘導する |
検索(SEO) | 商品名や悩みの言葉で検索した人を、記事や商品ページで受ける |
メール | 今の顧客の名簿にメールを送り、新商品やセールを知らせる |
ECモールにも出店する場合は、モールと自社サイトで商品や在庫をどう分けるかもこの段階で決めます。経路が決まると、実装する機能と必要なページがはっきりし、公開後の運用まで見すえた要件を書けるようになります。
期日の目処
ECサイトをいつ公開したいか、おおよその期日を決めておくことも大切です。期日があれば全体のスケジュールを逆算でき、どの段階で何をしておくべきかが分かります。
- 新商品の発売に合わせて〇月〇日までに公開したい
- 夏の繁忙期の前にオープンして、売上を伸ばしたい
- 年末商戦に間に合わせたい
期日が決まらないままだと、プロジェクトが長引いて費用がかさんだり、担当者の手が離れて止まったりしやすくなります。期日を決めたら、要件定義・設計・開発・テスト・公開の各段階に期間を割り振り、無理のない計画を立てましょう。
必要な要素・機能
ECサイトの要件定義でとくに大事なのが、サイトに必要な要素と機能をはっきりさせることです。これらはECサイトの土台となる要件で、制作会社に正しく伝えることで、見積のずれや手戻りを防げます。
機能の区分 | 具体的な機能 |
買う人が使う機能 | 商品検索、カート、決済、会員登録、マイページなど |
運営側が使う機能 | 商品管理、在庫管理、顧客管理、受注管理、売上分析など |
セキュリティ | SSL、不正ログイン対策、管理画面の権限管理、個人情報の保護など |
外部連携 | 決済サービス、配送サービス、基幹システム、SNSとの連携など |
機能を洗い出すときは、自社の業務の流れに沿って「誰が」「いつ」「何をするか」を思い浮かべながら整理すると、抜けに気づきやすくなります。
ECサイトの構築方式の選び方
要件が見えてきたら、どの方式でECサイトを作るかを考えます。方式によって、作り込める範囲、ほかのシステムとのつなぎやすさ、公開後の手間が大きく変わるので、要件定義書にも「どの方式を前提にするか」を書いておきましょう。
方式 | 向いている場合 | 気をつけること |
ASP・クラウドEC(月額で借りるサービス) | 早く小さく始めたい、商品の数が多くない | 画面や機能の作り込みと、基幹システムとのつなぎに限りがある |
パッケージ(オープンソース・商用) | 独自の機能や、ほかのシステムとのつなぎが要る | 構築と保守に専門の作業がいり、版の更新にも手間がかかる |
フルスクラッチ(一から作る) | 業務の流れが独自で、ほかの方式では合わない | 費用と期間が大きく、作った会社しか直せない状態になりやすい |
どの方式が合うかは、商品の数や売り方よりも、受注・在庫・出荷を今どんな仕組みで回していて、ECサイトとどこまでつなぐ必要があるかで決まることが多いものです。今の業務の流れと、つなぐ必要のあるシステムを要件定義書に書き出してから方式を比べると、選び違えにくくなります。
フルスクラッチや大きく作り込んだパッケージを選ぶときは、設計書やソースコードを納品物に含め、ほかの会社でも引き継げる状態にしておくことも要件に入れておきましょう。設計書に入れる項目は「【テンプレート配布】WEBサイト設計書の書き方や必要な項目を解説します」で解説しています。
ECサイトの要件定義書を作成する流れ

ECサイトの要件定義書は、プロジェクトを滞りなく進めるための土台になる資料です。次の順に作ると、要件の抜け漏れを防ぎ、制作会社や社内の関係者との認識のずれを減らせます。
サイトコンセプトの整理
ECサイトづくりの最初の段階は、サイトコンセプトの整理です。コンセプトとは、そのECサイトがどんな価値を、誰に届けるのかを言葉にしたものです。
この段階では、競合となるECサイトを調べたり、買ってほしい人の姿(ペルソナ)を描いたりして、自社の強みを生かしたコンセプトを考えます。コンセプトがはっきりすると、デザインや機能の方向性が定まり、社内の関係者や制作会社と話がかみ合いやすくなります。
ECサイト構築の背景や目的の明確化
前の章で話し合った目的と背景を、要件定義書の冒頭に、数字を入れた目標として書き留めます。たとえば「全国の新しい顧客に販路を広げ、公開から1年でEC経由の売上を月〇〇万円にする」「実店舗の売上が落ちているので、Webで新たな収益の柱を作る」といった書き方です。
目的が文書になっていれば、プロジェクトの途中で迷う場面が来ても、最初の目的に立ち返って判断できます。予算の都合で機能を削るときにも、目的に照らしてどれを残すかを決めやすくなります。
構築後の運用フローの整理
ECサイトは作って終わりではなく、公開後の運用の流れを先に整理しておくことが、安定した運営と売上の伸びにつながります。誰がどの作業を受け持つかを決めておけば、無理のない体制を組めます。
運用の作業 | 担当の例 |
商品の登録・更新 | 営業部門、マーケティング部門 |
受注・出荷の管理 | 営業部門、物流の担当 |
問い合わせ対応 | カスタマーサポート部門 |
売上の分析と改善 | 経営企画部門、マーケティング部門 |
システムの保守・管理 | 情報システム部門、または外部の制作会社 |
業務の流れがはっきりすると、ECサイトに載せるべき管理機能や、決済・配送などの外部サービスとのつなぎも見えてきます。公開前には利用規約や特定商取引法に基づく表記も用意が必要で、利用規約の作り方は「今すぐ使えるECサイト利用規約テンプレートを配布!効率の良い運用方法も解説します」で解説しています。
必要な機能や要素の明確化
ECサイトに必要な機能と要素を書き出す部分は、要件定義書の中心です。消費者向けか企業向けか、どの構築方式にするかといった前提に合わせて、載せる機能を網羅的に洗い出します。
ログイン、会員登録、カート、決済、検索、商品管理、顧客管理といった土台の機能は、一言ずつ説明を添えて書きます。ここを細かく書いておくほど、制作会社は見積を正確に出しやすくなり、あとからの追加や手戻りも減らせます。
デザインの方向性の整理
要件定義の段階では、完成画面(デザインカンプ)まで作る必要はありませんが、サイト全体の雰囲気・色・文字の方向性は決めておきます。参考にしたいECサイトのURLを3つほど挙げ、それぞれのどこが良いと思うかを添えておくと、制作会社に伝わりやすくなります。
方向性を早めにそろえておく目的は、次のとおりです。
- 発注者と制作会社のあいだでデザインの認識をそろえる
- 方向性を早めに決め、作り直しを減らす
- 買う人の使いやすさを考えたデザインを検討する
ECサイトの見た目と使いやすさは売上に直結するので、社内の好みよりも、買ってほしい人に響くかどうかを基準に決めましょう。
公開予定日から逆算したスケジュール設定
公開日が決まったら、その日から逆算して細かなスケジュールを立てます。要件定義・設計・開発・テスト・公開の各段階に、どのくらいの期間が要るかを見積もります。
商品の写真や説明文のように発注者が用意するものは、遅れやすいので早めに締め切りを置きます。予期しない遅れに備えて期間に余裕を持たせ、関係者全員で進み具合を共有しておくと、公開日に間に合わせやすくなります。
決済とセキュリティの要件は早めに決める
ECサイトの要件の中でも、決済とセキュリティはあとから変えにくく、費用にも響く部分です。クレジットカード決済を扱うなら、クレジット取引セキュリティ対策協議会がまとめた「クレジットカード・セキュリティガイドライン」を要件定義の段階で確かめておきましょう。
2026年3月に出た6.1版によると、日本クレジット協会の調査で2025年のクレジットカードの不正利用被害額は約510.5億円にのぼり、そのうち約9割をECサイトでの「なりすまし」による被害が占めています。こうした状況を受けて、2025年3月に出た6.0版では、ECサイトを運営する事業者(EC加盟店)の対策に、システムとWebサイトの脆弱性対策、決済前の不正ログイン対策、決済時の本人認証(EMV 3-Dセキュア)が加わりました。
ガイドラインは、カード情報を自社で持たない形(非保持化)にしている事業者でも、Webサイトの脆弱性を突かれてカード情報を盗まれる被害が起きているとして、カード情報を持つかどうかにかかわらず脆弱性対策を求めています。要件定義書には、少なくとも次の点を書いておきましょう。
- カード情報を自社のサーバーに通さない、または保存しない決済の形にするか
- EMV 3-Dセキュアに対応した決済サービスを使うか
- 会員ログインの不正対策(ログインの試行回数の制限、追加の認証など)
- 管理画面の権限管理、ウイルス対策、使う機器の管理と、定期的な点検を誰が行うか
- セールや繁忙期に、どのくらいのアクセスに耐える必要があるか
ガイドラインの本文と附属文書は、クレジット取引セキュリティ対策協議会のページで読めます。決済サービスや構築方式によって、自社で対応する範囲とサービス側で対応する範囲が変わるので、制作会社と決済サービスの会社に「この対策はどちらが受け持つか」を確かめ、要件定義書に書き残しておきましょう。
制作会社に依頼するならRFPだけで十分

ここまで要件定義書の作り方を解説してきましたが、制作会社に頼む前に発注者が用意する資料としては、RFP(提案依頼書)があれば足りることが多いです。細かな要件定義書は、制作会社が決まったあとに、制作会社と一緒に作り込んでいくのが一般的な流れだからです。
RFPは、発注者が制作会社に対して、プロジェクトの背景や目的、必要な機能や条件を伝え、提案と見積を頼むための文書です。この記事のテンプレートで整理した内容は、そのままRFPの中身になります。
主な目的 | 作る時期と作る人 | |
RFP(提案依頼書) | 制作会社にプロジェクトの内容と条件を伝え、提案と見積を頼む | 制作会社を選ぶ前に、発注者が作る |
要件定義書 | 作るものの目的・範囲・機能・条件を確定させる | 制作会社が決まったあとに、発注者と制作会社で作る |
RFPには、構築の背景・目的・売る相手・予算・納期・載せたい機能を書きます。RFPの質が高いほど、制作会社は的確な提案と正確な見積を出しやすくなり、複数の会社を同じ条件で比べられます。RFPの書き方は「【テンプレート】WEBサイト制作のRFP(提案依頼書)の書き方|書く項目と提案の比べ方」で詳しく解説しています。
ECサイトの要件定義や構築を相談したいときは

要件定義書やRFPを書いてみたものの、「この内容で制作会社に頼んで大丈夫だろうか」「どの構築方式が合うのか分からない」と迷うこともあるはずです。そうしたときは、当社にご相談ください。
当社は、受発注・在庫・顧客の管理のような業務に合わせたシステムや、会員サイト・予約・申し込みのようにブラウザで使う仕組みの開発と、サイトのリニューアルを手がけており、新規事業のECサイトの制作も行ってきました(制作事例)。目的と運用まで踏まえて、設計から公開後の保守と改善まで支援します。
ご相談の窓口に立つのは、エンジニアでもある代表です。ECサイトを今の業務の仕組みとどうつなぐか、どの方式ならどのくらいの費用と期間になるか、それぞれにどんな良し悪しがあるかを、持ち帰らずにその場でお答えします。小規模なホームページを決まった形で作りたい場合は、オーダーメイドのホームページ制作「チョイス」もあります。
まとめ|ECサイトの要件定義書テンプレートを使って要件を整理!

ECサイトの要件定義を自社で進めておくと、制作会社との打ち合わせが早く進み、無駄な費用や手戻りを防げます。Webの専門知識がなくても、この記事のテンプレートの項目を順に埋めていけば、ECサイトづくりの準備を進められます。
要件定義を始める前には、立ち上げの目的、集客と販路、公開日の目処、必要な機能を社内で決めておきましょう。そのうえで、要件定義書は次の流れで作ります。
- サイトコンセプトを整理し、ECサイトの価値と届ける相手をはっきりさせる
- 構築の背景と目的を、数字を入れた目標として書き留める
- 公開後の運用の流れを整理し、誰が何を担当するかを決める
- 必要な機能と要素を網羅的に洗い出す
- デザインの方向性を、参考サイトを添えてそろえる
- 公開予定日から逆算してスケジュールを立てる
あわせて、構築方式と、決済・セキュリティの要件も早めに決めておくと、あとから大きく作り直すことを避けられます。制作会社に頼むときは、整理した内容をRFPにまとめて渡せば、的確な提案と見積を引き出しやすくなります。
ホームページやコーポレートサイトの要件定義については「【初心者向け】ホームページ(Webサイト)の要件定義の作り方|13個の必要項目と進め方を解説」で解説しています。
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記事を読むこの記事を書いた人

株式会社デイワン 代表取締役 月森 隼人
不動産コンサルタント、注文住宅やマンションなどの企画営業を経験し、大手広告代理店のデジタル部署にて、Web領域でのブランディングややディレクションなど上流から幅広く担当。






